第43話

それでも貴方に見つけて欲しくて-宮侑-③
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2021/02/06 04:00
友達「...始まるね」

『うん、全て出し切るよ。後悔だけはしたくない。』

(このチームでやれるのは多分これが最後だから)

今までの努力が報われたのか、運が良かったのか、

はたまたそのどちらもか。

偶然を手操り寄せて掴んだオリンピックへの切符。

それは高校を卒業して3年後の事だった。



____________________
たまにテレビで見る大きな大会でいつも探す名前。


____MSBYブラックジャッカル


私が17歳の時のオリンピック。

日本は海外にいい所まで行ったものの

頂点には届かなかった。

あの悔しそうな宮選手の顔はいつもの楽しそうに

バレーをしている姿からは想像がつかないほど

ゆがんでいた。


「....惜しかった、なんて言葉はなんの価値もないねん。」
「....4年後。待っとって下さい。」
「絶対日本がてっぺんとったります。」


その日のテレビの取材では笑顔を見せることはなく、

その目にはただただ彼の目の前にある壁に向けられていた。

この日は興奮して寝れなかったのを

今でも鮮明に覚えている。

私はこの人の背中を追いかけているのだと、

同じ舞台に立とうとしているのだと。

それと同時にどれだけ遠い存在かを思い知らされた。


(今、あの時憧れた場所にいるんだ。この足で)

1度とは言わず何度も諦めかけて、それでもと

奮起してやっと立てたこの場所。


やっとここまで来た。もう後戻りなんて出来ない。

_____さあ、最後の祭りだ。
''
『センタァァァァ!!』

バシンッ

「ナイスキー!」

『まだまだ!3セット目このままいくよ!』

ガクン

『.....っ。』


まただ、膝が言うこと聞かない。

この足であと何回飛べる...?あと何回スパイクを打てる...?

あと何回____考えるな!



友達「あなた...っ!大丈夫なの?そんなに飛んだら.....」


『私は大丈夫だよ!言ったでしょ?全部出し切るって』


そうよ、もう決めたじゃん。''全部出し切る''って。

私に与えられた期間は5年間、まだあと1年は

普通の人と変わらない生活が送れるって言われてる。

傍から見たら私は多分、ここに立つには不相応。

分かっている。それこそプロ選手から見たら地べたを

這いずりに回ってもがいている様にしか

見えないかもしれない。


それでも。それでもいいから。少しだけ夢を。

今日で飛べなくなったって、バレーが出来なくなったって

____たとえ宮侑選手に見つけてもらえなかったとしても。

後悔しない選択を。

_____________________
宮侑side


俺は何しとるんやろ。

初めはただの後輩が頑張ってると雑誌で知って興味を持った。

この子はどんなプレーをするんやろか。

ただそれだけで、それが全てで。

雑誌で活動を追う度に

確実に俺の中で存在は大きくなっているのに

その気持ちと向き合わないまま

今日、本人のプレーを自分の目で見る。


__あぁ、この子の最高はこれじゃないやろ。

俺なら最強を引き出して上げれるのに、その自信があるのに

必死にコートの中でもがき足掻いている彼女から

目が離せないのは心配からか、興味からか。

欠けた翼で飛んでいる彼女を、俺は今日

初めて自分の目に映した。

____________________
あなたside



足の限界。自分が一番分かる、もう飛べないと。

少し夢を見た。

この試合に勝てる夢。

最後まで自分の足で戦い抜ける夢。

宮選手に見つけてもらえる夢。

でも現実はそう上手くいかなくて

もう飛べないのに、コートに居てはいけないのに、

まだここに居たい。終わりたくない。


「あなた!前!!!」

そんな私を嘲笑あざわらうようにボールは私の方へと落ちてくる。

動かない足を引きづって精一杯の返球。

「っ、、ナイス!!」

キラキラと光る天井に照らされるように

弧を描いてセッターの元へ返るボール。

勢いで走った明るい未来を信じて。

勝てると信じて。

ダンっと音が鳴るほどに地面を踏みしめて、

蝶のように、舞うように。

高く、高く見上げて目に焼きつける最後の景色。


ピピーッ


選手交代の合図。書かれた番号は私の背番号。

『っ、......』

ははっ、もう立てもしないじゃん。

宮選手に見つけて貰えてたとしても

もう私の夢が叶うことは無いだろう。

覚悟の上だったよ。


『........グスッ』


止まらない、分かってたのに。

頬を伝う涙は一向に止まる気配はない。

誰も、何も言ってこない。


_____もう明るい未来はやって来ない。






.


ゆん
多分、次の次くらいで終わるんですが
話が暗いので、間にちょっと
明るいの挟みたいと思います
続きはいつになるか分かりません。
ハッピーエンドにしようか
バットエンドにしようかすら
まだ決めてないので...
ゆん
続きは書く予定です。
ここに下書きして書いたら
おかしくなるから
メモに下書きしてるんだよね...
まだ全然考えておりません。
ここまでは、考えてた。
ゆん
次は何書こうかなー。
だれ書いて欲しいって
リクエストあります?
内容は私が決めるけど笑
学校で誰かさんが校則破るから
2月いっぱいは学校でスマホ使えないので
授業中思いついたのはルーズリーフに
下書きします笑
ゆん
誰でもいいです!笑
キャラのリクエスト
💬お待ちしております!

❤と⭐してってくれると
嬉しいです!

ちなみに今日は2話投稿しますね!



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