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第31話

愛し合う2人なら
1,805
2022/08/05 18:30

自ら噛みちぎった手首から血が滴り落ちる。

その痛々しい自分の手を、
息も絶え絶えなヨルの口元へと運んだ。
雨神ヨル
雨神ヨル
うっ…

一滴、また一滴と真っ赤な血が彼の喉を潤すたび
傷は塞がっていき、目の下のクマすら
すぅっと消えていく。

血色の悪かった顔も、
まるで陶器のようにつややかな白い肌へと回復する。

そして彼の夜色の瞳が私を見つめた。
雨神ヨル
雨神ヨル
ごめん俺…
みくるのこと守れなかった
けどもう大丈夫だ
佐藤みくる
佐藤みくる
ヨル…!
ヨルの父
ヨルの父
ふん…
死にかけの吸血鬼に何ができる

バカにするようにそう言った彼のお父さん。
彼はその言葉を聞くや否や、お父さんに殴りかかった。

それは目で追えないほどの一瞬の出来事だった。
ヨルの父
ヨルの父
何っ!うっ…

ヨルのお父さんは低いうめき声を上げ、尻もちをつく。
ヨルの父
ヨルの父
これほどまでの力…なぜ…
雨神ヨル
雨神ヨル
これで分かっただろ?
みくるがいれば俺はあんたなんかより
強くなれるんだ
ヨルの父
ヨルの父
生意気な!

このまま放っておけば壮絶な親子喧嘩が始まりそう!

私は睨み合う親子の間に慌てて割って入った。
佐藤みくる
佐藤みくる
お、お義父さん!
さっきヨルは私にくれるって
言いましたよね?
ヨルの父
ヨルの父
…お、お義父さんだと?
佐藤みくる
佐藤みくる
吸血鬼の始祖ともあろう人が
まさか嘘をつくなんてこと
ありませんよね?

にっこりと笑って念押しで尋ねると、
ヨル真っ青な顔でこちらを見た。
雨神ヨル
雨神ヨル
お前…親父が怖くねえの?
佐藤みくる
佐藤みくる
うん、もう怖くない
だって…大切な人を失う苦しみは
私にも分かるから

ヨルのお父さんはゆっくりと立ち上がって、
私たちに背を向けた。
ヨルの父
ヨルの父
もういい、好きにしろ
だが人間は吸血鬼と違って寿命が短い
いずれ必ず別れはくる…後悔するぞ

そう吐き捨てるように言って、
地下室のドアを開けたまま去っていった。







そして数カ月後。

吸血鬼と人間の種族間の深い溝がなくなるには、
まだまだ時間が必要みたいだ。

だけど、私の周りではいくつか変わったことがある。
佐藤みくる
佐藤みくる
お母さん!
いってきます!
気をつけてね

それは吸血鬼に転生したお母さんと、
また一緒に暮らし始めたこと。

厳しかったお父さんはお母さんの
尻に敷かれているけど、なんだか幸せそう。

それに、変わったことがもう一つ​──。

佐藤みくる
佐藤みくる
ヨル!おはよ!
雨神ヨル
雨神ヨル
おはよ
佐藤みくる
佐藤みくる
やっぱり…
一緒に登校できるのって嬉しいね
雨神ヨル
雨神ヨル
そうだな

そう、私の通っていた高校とヨルが通っていた高校が
合併し、人間と吸血鬼どちらの種族も通える高校として
初めて認定されたのだ。

種族に関わらず、誰でも平等に
昼夜好きな授業を選択できる仕組みになっている。

なんでもヨルが始祖であるお父さんを
説得したらしいんだけど……。
雨神ヨル
雨神ヨル
あのクソ親父!
高校の合併の条件として
俺を殴ったんだ!
この前の仕返しとか言いやがって…
佐藤みくる
佐藤みくる
仲いいんだね
雨神ヨル
雨神ヨル
いいわけねえだろ!

なんだかんだ言いつつも、彼のお父さんは
こうして共学高校の取り組みを進めてくれた。

それに家畜小屋と称した人間の飼育も
ヨルの進言で取りやめにしたらしい。


もしかして私たちのこと応援してくれてるのかな?
佐藤みくる
佐藤みくる
(そうだったらいいけど…)
雨神ヨル
雨神ヨル
さっきから
何考えてんだ?
佐藤みくる
佐藤みくる
え?いや、何も…
雨神ヨル
雨神ヨル
嘘つけ
またあいつのことだろ
あの半吸血鬼の…
佐藤みくる
佐藤みくる
え!?
狭間くんのこと?
あの人はもう…
雨神ヨル
雨神ヨル
うるせえ!

彼の深い夜色の瞳が間近に迫り、はっとする。
佐藤みくる
佐藤みくる
ヨ、ヨル…近い
雨神ヨル
雨神ヨル
喉渇いた…
今、一口だけ飲ませて?


そう耳元で囁かれ、カッと顔が熱くなる。
佐藤みくる
佐藤みくる
い、いいよ
ちょっとだけなら…
こうやってつい彼のワガママに頷いてしまうのは、
きっと惚れた弱みなんだろう。
雨神ヨル
雨神ヨル
ありがと
佐藤みくる
佐藤みくる
ちょっとだけだか…
らっ…ね!?

最後まで言い切る前に、かぷりと首筋に噛みつかれる。

いつも軽い甘噛みから入るその吸血は、
徐々に深いものへと変わっていく。

最初こそ慣れなかったものの、今ではすっかりその行為​──彼の牙を受け入れてしまっている。

そのせいか、甘くしびれる感覚が全身を駆け巡り
すぐに力が抜けてしまうようになった。
雨神ヨル
雨神ヨル
おっと!
腰抜けた?
佐藤みくる
佐藤みくる
…ヨルのバカ!

にこっと笑った彼の口元についた赤い血が、
自分のものだと思うとなぜか心が満たされていく。

もうきっとヨルからは離れられない。
エサの女
エサの女
ちょっと、アンタたち
道のど真ん中で何してんのよ
佐藤みくる
佐藤みくる
うわああ!ニーナさん!?
と、狭間くん?
狭間ユウ
狭間ユウ
おはよっ!

2人だけの世界に浸っていたら
すごく側にニーナさんと狭間くんが立っていた。
佐藤みくる
佐藤みくる
い、いつからそこに!?
狭間ユウ
狭間ユウ
「ヨル…近い」のあたりかな?
佐藤みくる
佐藤みくる
最初からじゃん!

恥ずかしくて顔から火が出そうだ。

狭間ユウ
狭間ユウ
まったく、ヨルくんの方は
気づいていてわざと
やったみたいだけど?
佐藤みくる
佐藤みくる
そうなの!?
雨神ヨル
雨神ヨル
ああ、見せつけてやろうと思って
狭間ユウ
狭間ユウ
はいはい、男の嫉妬は怖いね~
俺たちは先に行こっか!
学校に遅れちゃうし、ね?
ニーナちゃん
エサの女
エサの女
ちょっと!
なんで手握ってんのよ!
狭間ユウ
狭間ユウ
転校してきたばっかだし
道分からないでしょ?
エサの女
エサの女
わかるってば!

ほんのりと色づいたニーナさんの頬。

もしかして、2人にも
新しい何かが芽生え始めているのかもしれない。
佐藤みくる
佐藤みくる
私たちも遅刻しちゃう!
雨神ヨル
雨神ヨル
待って、みくる
佐藤みくる
佐藤みくる
え?
雨神ヨル
雨神ヨル
さっきはごちそーさま
それと…

「愛してる」

そう耳元で囁いた彼は私の唇に軽いキスを落とした。

吸血ではあんなに積極的なのに、
恥ずかしそうに顔を背ける彼。
佐藤みくる
佐藤みくる
照れてる?
雨神ヨル
雨神ヨル
は?照れてねーし!
早く行くぞ!
佐藤みくる
佐藤みくる
うん!



この先どんな困難が待ち受けていたとしても、
きっと私たち​​──愛し合う2人なら
乗り越えていける気がする。





END