智母)いらっしゃい!あなたちゃん!
あれから数日後、智くんの家の前に立つ私はひどく緊張していた!
智母)どうぞ中入って!
あなた)お、お邪魔します‥‥!
リビングへ連れられると、「好きにしてていいよ」と投げかけられた。
好きにしててもいいって、人の家で何すれば‥‥
部屋をキョロキョロと見渡していると、視界に入った写真。
棚の上に、いくつも並べられていた。
あなた)この写真、見てもいいですか?
智母)いいわよ〜!その智洋はね、小学生くらいやったかな〜
あなた)この写真の智くん、めっちゃ笑顔で‥‥、、
キッチンに立つ智くんのお母さんに、「可愛い」と続けようと振り返ると、
閉めたはずの扉の向こう側に、彼がいた。
神山)‥‥そこのソファ、座っとって
お互いに見つめ合い、言葉を探し続ける無言の時間。
そんな私たちを見た智くんのお母さんは、「あなたちゃんに飲み物出してあげて!」と、彼をキッチンへ呼び寄せた。
そして、「ちゃんと話しなさい。」と部屋を後にした。
神山)ごめん、お茶しかなかったんけどええ?
自分用と私用のコップを持ってきた智くんは、そう言って静かにそれを机に置く。
あなた)うん、ありがとう
言いたいこと、ちゃんと言わなきゃ‥‥。
だけど、私が何か言える立場なのかな、、
私が学校で あんなことにならなければ、智くんだって怪我しなかったし、
学校だって変える必要もなかった。
そう思うとやっぱり後ろめたくなって‥‥‥。
俯くことしかできなかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!