花穎は声高らかに宣言して、唇の端を不敵に引き上げた。
聞く者のいない声が、寝室の白い天井に反響する。
突き出した両の腕に血液が巡り、拳がじわりと熱を帯びる。
裸足の下には、起き抜けのベッドがまだ温もりを持っていて、夢と現の世界を微かに繋ぎ止めていたが、それもすぐに冷め、彼に眠りから覚めた実感を伴わせた。
春の早朝はまだ冬の領域だ。
隙あらば体温を奪いにかかる。
骨の髄まで冷やす真冬の寒気に比べれば手緩いが、それでもパジャマ一枚でいれば充分に風邪を引ける寒さだった。
花穎は、捲れた掛け布団に腰まで潜り込ませて、室内を見回した。
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ページ 一枚づつ出切っていきたいと思います。もちろん、ちゃんとオリジナルで作っていくので楽しみにしていてください
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!