SIDE:🦔
俺が、なにかできるわけじゃない。
寂しそうに笑っているけど
単純に悲しいだけじゃないって、
目がそう訴えてる気がした。
ドアの向こうで聞こえた会話の
全容を知ってなんかないけど
話の噛み合いかたが、どうも居心地悪かった。
どこか確信づいた喋り方をするあなたさん
それに怯えるような返事の遅さのイジュンさん
俺が介入することじゃないのは、知ってる。
地雷だって、わかってても
なにかを、誰かを守らなきゃいけない気がして
見えない、わからない罠があるような気がして
ああもう、もっと頭が良ければいいのに。
なにを守りたいんだろう。
なにに違和感を感じているんだろう。
必死に、さっきの会話を頭の中で繰り返して
わからないものを、今すぐに聞いて
長い付き合いの2人に距離感を感じるのは
勝手な俺の気のせいなのかな。
あなたさんは、イジュンさんすら
全く信じていない目をしている気がするんだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!