第79話

誕生日
3,955
2021/11/01 03:44
2ヶ月経ち

0時になり夜中を迎えた時



小「きよ、誕生日おめでとう!」

隣に座るこたが真っ先にお祝いの言葉をくれて

ちゅっと唇を重ねる


小「ごめんね、明日ちゃんとお祝いできなくて」

明日もリハや雑誌の取材で1日忙しい

こたが喋ってる間にも、LINEの通知が止まないから、みんながメッセージをくれるだけで嬉しい


清「ツアー優先!大丈夫やって笑」

小「9日の初日が終わったらデートするからね?」

清「うん、楽しみやけど『初日』なんて言われると今から緊張してくる!」

小「あ、忘れてないよね?僕の誕生日は福岡で一緒にご飯だよ?」

忘れるわけないやん、俺が誘ったんやから


清「明日も早いから返信したら寝よ?」

誰からきた?なんてスマホを覗くこたに寄りかかり、返信をしていく




翌日の誕生日は朝から21時まで仕事で、22時前に家に着くとさすがにみんな疲れきっていた

小「きよ、部屋行くから待ってて!」

清「先にご飯頼まないと寝るの遅くなるで?」

さっさと自分の部屋に行こうとするこたを引き止める

小「市川くんが頼んでくれてるから大丈夫!」

…誕生日やからかな?

忙しい時に申し訳ない気持ちもあるけど、心遣いが嬉しい


コンタクトだけでも先に外そうかな…

寄りかかるとそのまま寝てしまいそうだ




小「きよー?」

清「ん…やば、寝てた…」

部屋のソファーにもたれて眠ってしまったようだ


清「…えっと、どしたん?」

何故かこたが机の前で背筋を伸ばし正座している

真顔が怖い

…また何かあるの?

『倦怠期』の出来事が頭をよぎる


体を起こすと


小「これ…」

え…何もないけど?


あ、何か紙が置いてある…

清「ん?…コンタクト外してよく見え…」



清「はっ!?」

思わず紙を掴み上げて凝視する


清「えっ?…どういう事!?」

小「誕生日プレゼント」

清「だ、だってこれ…」



何度見てもそこに書かれている文字は



婚姻届




清「何でっ!?」

小「何でって…きよ、僕と一生一緒に居る気、無くなっちゃったの?」

清「あるよ!…やけど男同士は結婚出来ひんやん?」



小「提出出来なくても、僕は本気だから書いたんだよ?」

こたの女の子みたいな可愛い文字を見つめる

双葉小太郎と、確かに書かれているのに

段々と涙でボヤけて見えなくなる


ポタッ

婚姻届に1粒の涙が零れて、慌てて顔を離す



小「きよが不安にならないように、それ書いて持っててよ」

清「その為に…書いたん?」

小「そうだよ」

もう涙が止まらない


清「だ、って…これ、ホンモノやんっ」

小「そりゃそうだよ、区役所行ってきたもん笑」

笑いながらそう言い、俺の前に来て座るこたは

もう笑ってなくて



小「きよ、結婚しよ?」


気づくとこたの手の上には小さな箱が乗っていて

開かれた箱にはリングが2つ並んでいる



清「うっ…グスッ…こた、まだ未成年やのにっ…」

こたがまさかこんな事をしてくれるとは思ってもいなくて

自分でも訳分からない事を言ってると思った


小「18歳で結婚出来るんだから、僕もう大人だよ?今月ハタチだし」

清「そうやけど、付き合って半年とかやん…グスッ」

小「期間なんて関係ないじゃん、この人って思ったんだからいいでしょ」

提出出来るとか、出来ないとか、そんなのどうでも良かった

出さない紙に何のサインしたって意味がない、って周りは思うかもしれないけど

結婚指輪まで用意してくれるこたの気持ちは遊びなんかじゃない、ってすぐに分かった


清「グスッ…俺でええの?こんな、早く決めてええの?」

小「きよじゃなきゃダメに決まってる」

俺の性格を良く分かってるこたは、俺が一言発するたびに辛抱強く答えてくれて



小「きーよ?」

両手で俺の頬を包み込んで



小「プロポーズしたんだから、返事して」

大きな瞳が俺を見つめる


あ…

気づいてしまう、こたが緊張してる時の顔だってことに

俺の返事なんて決まってるのに、それでもこたは緊張しながら待っている…



清「結婚するっ」

無性にこたを抱きしめたくて、勢いよく飛び込む


小「ちょ!指輪!」

落としそうになったのか、慌てる声がするけど

清「置いてっ、こたもぎゅーしてっ」

小「泣くなよっ笑」

からかうような口調だけど

ぎゅっと俺を抱きしめ返して

優しく頭を撫でてくれる



小「きよ…愛してる」


清「っ…生まれて初めて言われた」

愛してる、なんて言葉を自分が言われるとは想像もしていなかった


小「僕も生まれて初めて言ったし…言われた事ないよ?」


うん…その目は俺にも言えって事やんな

でも、今なら素直に言える


清「こた…愛してる」



言った後はやっぱり恥ずかしくなって

こたの胸で1人悶絶した





小「きよ、手出して?」

思わず利き手を出すと、違うっ!と言われて左手を掴まれる


清「え…ぴったりやん!」

薬指にはめられた指輪を見て驚いてると

小「当たり前!」

ドヤ顔で俺を見るこた

…俺、聞かれた事なんてないよな?


清「どうやって調べたん?」

小「みなとに頼んでサイズ調べてもらった」



え、そんな事あった?

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