今日は会社に向かわず、商店街や、近くの公園やカフェを回った。ケータイの電源を切って。
みんな心配してるかなぁ、
そしたらさとみくんに聞くだろうな…
さとみくん、なんて答えるかな…
そんなことを考えてブラブラして夜の7時に家に帰った。やっぱりさとみくんはまだ帰って来ていなかった。
ケータイの電源を入れると、ななもりさん達から10件ぐらい連絡が来ていた。
何も答えずに、ソファに寝っ転がってボーっとしていると、さとみくんが帰ってきた。
完全に私達は冷え切っていた。
仲直りしたいけど、なかなか素直になることができない
もう、
ダメなのかも…
どうすれば仲直りできるのかな…
涙が出てきた。
私がここに居たらたぶんさとみくんは帰って来ない。私が、出ていかないと。
荷物をまとめて外に出た。
今は11月。夜でとても寒かった。
外に出たけど…何処行けばいいんだろ…
大通りを歩くと、きゅんちゃんに絡まれているさとみくんを見つけた。
きゅんちゃんはさとみくんの腕に擦り寄ってさとみくんを離そうとしない。
嫌…近づいて欲しく無い…
私はさとみくんの反対の腕を引っ張った。
さとみくんが私の手を引いて走り出す。
しばらく走ってさとみくんは止まったけど、私の方を見てくれない。
それが悲しくて、
地面に何粒もの涙が落ちる。
さとみくんは優しく涙を拭ってくれた。
さとみくんが抱き締めてくれた。
私達は私達ふたりの家に帰った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。