カランッ__
月曜日、俺はきおらさんの元へ向かっていた。
ニコッと微笑んでくれるきおらさん。
冷蔵庫を見ながら首を傾げる。
昨日初めて出会ったのに、昔から通い続けているかのような安心感があって凄く落ち着くんだよな…。
頂いたというアジはすでに捌いてあった。
油を熱している間に、茹で卵を作る。
殻をむき潰してからマヨネーズを入れ、隠し味にお酢を入れる。きおらさん曰く寿司酢を少し入れることでさっぱりしたタルタルソースになるそうだ。
タルタルソースができたら小麦粉、溶き卵、パン粉を用意し、アジにくくらせカラッと油で揚げていく。
お皿に盛り付ける時は千切りキャベツを忘れずに。トマトを横に添え、主役のアジフライを乗せれば完成。
タルタルソースを小皿に盛ってプレートに置く工夫はきおらさんの優しさが分かる。きっと自分の分量でソースをかけてねという意味なんだろう。
一口食べるとサクッとした食感が口いっぱいに広がる。さっぱりとしたタルタルソースがたまらない。
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▽▽
ご飯を食べた後は幸せな気持ちになる。
きおらさんのご飯は暖かくて、美味しい。
きおらさんはスッと立ち上がり、俺の前に来る。そして手を差し伸べ優しい笑顔で言った。
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カランッ__
『春夜君!昨日は内容覚えてないけど夢を見たよ、朝すっきりして目覚めることができたんだ!』
『星空屋は本当に良い店だ。出会えてよかった。…よし、じゃあ春夜君、オーナー。今日も美味しいの頼むよ』
きなり色のエプロンを着て、笑顔でお客さんを迎える。
きおらさんの誘いもあり、バイトをすることにした。バイトを初めて数ヶ月。
今日はどんな夢を見るのだろうか。
次は俺がお客さんに笑顔と"夢"をお届けする。
星空屋は月曜日、金曜日、日曜日にオープンしていますよ。良い夢を見て明日も頑張りたいという方、いつでもお待ちしています。
ゴンッ!!
きおらさんは相変わらずおっちょこちょいです。
完.
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!