海人side
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頭に手をのばしてきた廉の手を振り払ってしまった
直後に廉の傷付いた顔が見えて
我に返った
自分の顔を見られないようにして
走って逃げた
早く
早く廉の姿が見えなくなるまで…
廉も俺のこと好きとか
そんなわけないじゃん…
廉様は特進クラスのイケメン王子
俺は所詮普通クラス
こんな2人がつり合うわけがないのに、
ちょっと優しくされたからって調子に乗って
バカみたい…
ー翌日ー
友達「あれ、海人今日早いじゃん、おはよ」
友達「目腫れてるけど、大丈夫?」
いつもは廉と一緒に登校するけど、
今日は会いたくなかったから先に来てしまった
とりあえず学校に来ただけ褒めてほしい
生まれてこの方、失恋なんて初めてのことで
立ち直るなんてできそうもない
立ち直る気なんてさっぱり起きない
すると、廊下の方がザワザワしていた
なんだか嫌な予感はする
それも多分…
席を立って逃げようとしたところを
強い力で抱きしめられた
途端に鼓動が早くなって
自然と涙が溢れてくる
廉を突き飛ばして教室を出た
廉を見に来た野次馬が廊下にまで溢れてて
こんな大勢に今のやり取りを見られてたと思うと
いたたまれない気持ちになった
もう廉に嫌われたに違いない
もう廉と喋れない
喋る権利なんてない
せっかく廉の方から来てくれたのに
大っ嫌いって叫んで
もう、終わった…
『海人!海人!!』
どこからともなく、廉の声が聞こえた
もしかして、追いかけて探してくれてるの…?
どこまでいいやつなんだよ…
そういうところも、好きなの…
「ねぇ、ちょっといい?」
next…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。