高校に入ってから好きな人ができた。
その人は優しくて面白くていい人だった。
高校最後の日私はいつもどおり屋上でお弁当を食べに行くところだった。
しかしいつもは閉じているドアが少し開いていたのが気になって急いで出た。
そこには彼がいた。
彼はもう嫌だと言っていた。
でも私は死んでほしくなかった。
大好きだから。
だから彼が飛び降りた時、急いで私も落ちた。
落ちながら彼を抱きしめた。落ちても怪我がないように。
落ちているとき、色々な記憶が蘇った。
どれも楽しい事ばかりだった。
彼が生きてくれるのなら、私はいいと思っていた。
私が目覚めたのは病院に運ばれた30分後。
彼は無事だったそうだった。
私も大きな怪我はなかったそうだ。
屋上から彼を庇って落ちたのに大きな怪我がないのは本当に奇跡だと言われた。
しかし、一つ問題があった。
歯が全部折れているのだ。
歯がないということは入れ歯になるのかと考えると少し嫌だった。
そんなことを考えていると突然口の中に激痛が走った。
私はお見舞いに来ていた教師に飛びつき、喚いた。
痛い。お願い。助けて。
教師は急いで医者を呼んでくれた。
医師は目を疑うようにして私の口の中を見た。
本当にありえないといいいながら。
鏡を見ると歯が生えていた。
私の折れた歯はすべて永久歯。
生えてくるはずがない。
なのにそこには歯が生えていた。
ギザギザしたサメのような歯が。
その後は髪の色素が突然抜けたことぐらいしか異変はなく、体調も悪くなかった。
その後彼とは会っていない。
彼が最後に言った言葉。
それは
愛より歪んだ呪いって本当にないんだな。
ピンポーン
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。