第12話
錆兎物語
あなた…。
ある夜、私の夢の中で不意に名を呼ばれた。
声の主は錆兎という赤毛の少年だった。
そして朝。
なんか変な夢だったなぁ。
錆兎…。
それは炭治郎に稽古をつけた少年。鱗滝左近次という育手の教え子だという。
そして今日が終わる。
あなた…。
また名前を呼ばれた。
なに?
私が問うと、錆兎は答えた。
思わず声を挙げると、もうこんな時間、朝になっていた。
任務がある。だから2度寝する訳には行かない。
私は任務中も、ご飯の時も、ずっと考えてた。
そしてまたまた夜。私はすぐに床に就いた。
私は主の名を呼んだ。だが、主は見当たらなかった。
それから毎晩、私の前に錆兎が姿をあらわすこともなく…。
痺れを切らした私は、鱗滝左近次という老人を尋ねた。もしかしたら、心当たりがあるかもしれない。
それは、とても山奥にあった。それまでに、たくさんの罠があり、私は思いがけない物にクタクタだった。
私は、事情を話した。鱗滝さんは、少し驚いたような仕草をした。
鱗滝さんは言葉を区切る。
私はこの時、色んな事が脳裏に蘇った。
もしかして、錆兎が言ってたことは…、ホントなのか…。
ホントなのだったら、なぜ私は蝶屋敷であったのか。
ホントだった。私は悲しみと悔しさで、呆然とした。
ようやく分かった。真実が…。
私は感情の波に飲み込まれ
その場で泣き崩れた…。
隠すことも無く…。
そして、更なる事実も発覚…。
水柱の冨岡さんと、錆兎は同期だということ。
だが、鱗滝さんに念押しされた。冨岡さんには、絶対言うなって。言うと、泣いちゃうから、って…。
次の日早く、私は屋敷へ帰った。
真実が知れてよかった。錆兎のことも。冨岡さんのことも。
でもこの事は誰にも言わない。
だって…。
言ったら、悲しくなっちゃうから。