「まこちゃん、まじ疲れた顔してるね。あんまり食べてないんでしょ?仕事できてるみたいだから、それでいいと思ってんだよね。」
「うん。」
「可愛い広報さん、台無しだよ。」
「もう、関係ないじゃん。」
「僕も仕事なかったらどうなってたかわかんないよ。」
「えっ?」
「僕、まこちゃんから離れたら、楽になれると思ってた。仕事のことだけ考えてればいいし、寝落ちしても既読スルーも罪悪感ないし。」
「ごめんね、私が重荷だったんだよね。」
「違うんだって。まこちゃんから離れて、仕事しても楽しくないし、遊びにも行きたくないし、他の子にも興味なくてさ。」
「…。」
「でも、どうしたらいいかわかんないし、LINE送ったけど、既読すらつかないし。まこちゃんのうちに行こうかと思ったけど、車ないし。」
「ごめん、LINEめちゃくちゃ溜まってる。もうずっとみてない。」
「まこちゃんはどうしたい?」
「私は…もう、どうしていいかわかんない。」
目にハンカチを当てて、俯いてた。
「新番組の打ち合わせって言われて、本当は行きたくなかった。リーダーに『新番組だし、絶対来い。来ないと後悔するから。』って言われて。来たら、僕よりもよっぽど辛そうに仕事してるまこちゃんがいて。」
「全然だよ。」首を横に振る。
「逃げちゃった。もう見てらんなくて。」
「そっか。」
「気がついたら、地下駐車場にいた。そしたら、リーダーに捕まった。」
「うん。」
「まこちゃんが逃げるならわかるけど、お前が逃げるのはおかしいって言われた。」
「えっ。」
「まこちゃんはお前が来る可能性があるのをわかってても、ちゃんと仕事してんのに、なんでお前が逃げる?それはおかしい。仕事として割り切れないなら、ちゃんと言いたいこと言えって。」
「…。」また涙が止まらなくて、俯くまこの隣に座り直すと彼は話を続けた。
「この前の時、リーダーがまこちゃんが泣いてるのを見て、僕のところに来た。あの時、すごくリーダーがまこちゃんのことを心配して僕に怒ってて。きっと、リーダーならばまこちゃんのことを幸せにしてくれるって確信した。」
「…。」
「だから、いつかまこちゃんに会って幸せそうにしてたら、あの時の僕の決断は間違ってなかったと思って、吹っ切るつもりだった。」
「…。」
「でも、さっきリーダーが『まこちゃん』って呼んで、まこちゃん見たら、あんまりにも辛そうで、今にも倒れそうで。まこちゃんが僕から離れた後にどんな生活してたかがすぐにわかったよ。」
「…。」
「リーダーとは?」
「あの後からは今日まで何も。」
「何も?」
「うん。」
「ねぇ、まこちゃん、手貸して。」
彼は手を繋いだ。
けど、違和感を感じた。
「まこちゃんの手、あったかくないし、ぽろぽろだよ。」
「…そうだね。」
「まこちゃんに僕のパワーを全部あげる。」
「ううん。」
手を離そうとするけど、振り解く力もない。
「ダメ。」
「嫌だ。」
「全部持ってって。」
「嫌、もう優しくしないで。」
でも、弱々しい声のまこ。
「えっ。」少しひるんだ時に手を離す。
散々泣いたのに、また涙が止まらない。
「もう、無理だよ。」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。