第22話

22
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2018/05/03 01:02
リンナ
リンナ
ハハッ、エレン
意外と似合ってるじゃない
僕の服を着たリンナが、からかうような口調で言う


僕からのお願い…それはお互いの服を取り換えっこすることだった
今、僕はリンナのドレスを着て、リンナと同じ髪型をしている
リンナ
リンナ
こうして見ると、エレンは私と、本当によく似ているのね……
リンナ
リンナ
それにエレンの服
みすぼらしい服だけど、着てみると中々動きやすいわ
そう、召使の服は、王女のドレスよりずっと軽くて動きやすい
だから……
エレン
エレン
その服ならば、王宮から上手く抜け出せるかもしれません
僕の言葉に、リンナの顔から笑顔が消えた
リンナ
リンナ
何を……言ってるの?エレン
エレン
エレン
リンナ
その服を着て、暖炉の裏の抜け穴から逃げるんだ
外には君の馬を待たせてある
君はそれに乗って、どこか反乱軍の手の及ばない遠くへ……
リンナ
リンナ
馬鹿言わないで!王宮に私がいないことがわかれば、すぐに捜索の手が入るわ!
逃げ切れるわけ………ない
エレン
エレン
大丈夫
大丈夫だよ
僕は着ているドレスを見せびらかすかのように、その場でくるっと一回りする
エレン
エレン
王女様は、ここにいるからね
リンナ
リンナ
そんなの駄目よ!いくら似てるからって弟を死なせるなんて……お姉ちゃん失格よ……
エレン
エレン
?!
エレン
エレン
覚えていた……?いや、思い出したの…かい?
リンナ
リンナ
こないだ……少しだけ思い出したの
エレンが理性を失っていて悪魔にとりつかれている間に
リンナ
リンナ
ずっと私のことを、「リンナ」とか「姉さん」とかで呼んでいたわ
リンナ
リンナ
それで、私に弟がいたんだ…一人っ子じゃなかったんだ…と思い出したの…
リンナ
リンナ
お願い…エレン行かないで…
こうなったのは全部…私のせい
だからエレンが殺される道理はないのよ…
エレン
エレン
リンナ……確かに君は悪い子だ
だけど……君が悪だっていうなら、僕にだって同じ血が流れている
君が「悪ノ娘」なら、僕は「悪ノ召使」だ
だからいいんだ
僕が君の代わりになるから、君は僕の代わりに……生きて
僕は部屋の外に出た
そして、扉を閉じた
リンナ
リンナ
……待って、エレン!
扉を開けようとするリンナ
だけど開かない
僕が外側から鍵をかけたからだ
エレン
エレン
じゃあね、リンナ
僕は行くよ
君もすぐに抜け穴から逃げるんだ
僕は扉から離れ、歩き出した
リンナ
リンナ
待って!行かないでよォ……
扉を懸命に叩く音と共に、かすかにリンナの声が聞こえる
リンナ
リンナ
お願い、1人にしないでぇ………
大丈夫、大丈夫だよ

僕は「悪ノ娘」 強い女なんだ

だから……












決して、泣いたりしない

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