処刑台の下で、多くの人々がこちらへ向けて罵声を浴びせている
その言葉は全て僕に、いや、正確にはリンナに向けて発せられているものだ
彼らの目は憎しみであふれ、敵意をむき出しにしている
嗚呼、リンナ
君の周りは敵ばっかりだ
君はやっぱりひとりぼっちだったんだね
だけど安心して
僕が君を守るから
もうこの国は君のものではなくなってしまったけれども、君はどこかで、笑っていてくれればそれでいい
見上げると、頭上には青い空と、巨大な刃
僕はうつぶせに寝かされ、断頭台に首と両手首を固定される
処)もうすぐ時間だ
教会の鐘が三度鳴った時、処刑は執行される
そうか、このギロチンで僕は殺されるのか
このまま処刑が滞りなく実行されれば……
この巨大な刃が僕の首に………
嫌だ
死にたくない
何で?何で僕が死ななくちゃいけないの?嫌だよ。怖いよ。死にたくないよ。嫌だ嫌だ嫌だ。逃げればよかった。リンナと一緒に逃げればよかった。いや、駄目だ。二人じゃすぐに捕まる。僕が身代わりにならないと。逃げればよかった。メイヌと一緒に逃げればよかった。いや、駄目だ。彼女だって……僕の姉さんなんだ。だから……ああ言うしかなかった。僕は何でここにいるの?僕はまだ14歳だよ?何で、何でみんな僕を罵るんだ!僕をいじめないでよ。嫌だよ。死にたくないよぅ……
……るりら……るりら……
また、幻聴が聞こえてきた
幻聴どころじゃない。幻覚まで見えてきた
今よりも大分幼く見えたリンナが僕のすぐそばにいた
幻覚の彼女は、笑いながら、僕の手をそっと、握ってくれた
……嗚呼、温かい手だ。とても安心する……
そういえば、この時のリンナって……
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。