今の風晴君には、何を言っても
私の言い訳にしか聞こえないよね。
そのわりには、ぜんぜん許してくれそうもない。
どうにか、風晴君をどかそうと
手を伸ばすが、転んだ私の上から
どけてくれる様子がない。
ギュウウウウ____
口を摘まれ、喋れない。
唇に、優しく口づけを落とす。
私は、動けないあげくに、抵抗できず
ピキーーンと、固まってしまう。
風晴君は、私から降りると
首元を、カリカリとかいた。
風晴君は、私のことを
強く強く抱きしめると、
と、よくわからないことを言った。
こんな、私に、誰がなびくと
言うのだろうか?
風晴君は、心配性かもしれないと
思う。でも、彼氏が、そう言うのなら
私にできることは、なるべく
心配をかけないことだと思うから・・・
と、理解もしていないのに
そう答えた。
帰り道、風晴君は
少し心配したような声で
そう尋ねてきた。
そう答えると、しゅんと
落ち込んでしまう。
風晴君は、肩を落としながら
そう呟く。
自然と、互いに手を握っていた。
風晴君以外、どうでもいい。
そう思ってるって伝えても、
信じてはくれないんでしょう。
だったら、私は、行動で示せるようにしたい。
誤解されたくない、君以外
必要ない。そう、強く想いながら
握られた手を、キュッと掴んだ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。