小さい顔に大きくて二重の目。筋肉質の足と腕。
全てが完璧すぎる美広先輩。
それに比べて私は本当に人並み。平均。普通。
唯一のコンプレックスは人よりも太い足。
自分で言うのもあれだけど、他のところに無駄な贅肉はほぼついていないのに、足だけ妙に太い。世にいう“大根足”。
そんな私がこんなに美しい先輩の隣に居ていいのだろうか。そんなことばかり考えてしまって説明が耳に入らない。
リードとかいう木が挟まった黒いもの。マウスピースっていうらしい。
息を吸って咥える。
音が
出た!
美広先輩の反応は、よく新入生にやる「わぁスゴい!才能あるね!」のような特殊技法を用いた話のトーンではなく、本当に驚いてるように感じた。
楽器って吹けると楽しいんだ。
私は吹奏楽部に入ることを決めた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。