第7話

テナーサックス
126
2020/01/06 11:19
みひろ
みひろ
まずこの木の板みたいなのがリードっていうんだけど、こんな感じにする。

小さい顔に大きくて二重の目。筋肉質の足と腕。


全てが完璧すぎる美広先輩。




それに比べて私は本当に人並み。平均。普通。




唯一のコンプレックスは人よりも太い足。




自分で言うのもあれだけど、他のところに無駄な贅肉はほぼついていないのに、足だけ妙に太い。世にいう“大根足”。

そんな私がこんなに美しい先輩の隣に居ていいのだろうか。そんなことばかり考えてしまって説明が耳に入らない。
みひろ
みひろ
じゃあ吹いてみようか。
リードとかいう木が挟まった黒いもの。マウスピースっていうらしい。




息を吸って咥える。
あづき
あづき
………!
音が
出た!
みひろ
みひろ
すごい。初めてなのに、こんなにクリアな音が出せるなんて……。
美広先輩の反応は、よく新入生にやる「わぁスゴい!才能あるね!」のような特殊技法を用いた話のトーンではなく、本当に驚いてるように感じた。
みひろ
みひろ
じゃあ次はこの指とこの指を押して…。
楽器って吹けると楽しいんだ。




私は吹奏楽部に入ることを決めた。

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