ガチャ…
お兄ちゃんがドアを開けると、目の前に立っていたのは、樋口先輩だった。
うわっ…
えっ!ちょっ…真由ちゃん
今の反応ひどくねぇ!?なぁ、浩太!
知らね…
(真由は、自分の友達が先に来たとでも思ったんだろ)
(樋口先輩が先に来るとは思わなかったんだもん…)
でも、思いっきり表情に出してしまったのは…
(私が悪いね。うん…)
お兄ちゃんが樋口先輩と玄関先で話しているのを、
私はぼーっと見ていた。
すると、続けて愛ちゃんと三島くんもやって来た。
あっ、浩太先輩!こんにちは!
こんにちは
…どうも
(やっぱり、男もいたか…)
…………
(ん?何か真由のお兄さんにじっと見られたような…)
こんなとこで話してるのもなんだし、みんな中に入ろうよ
それもそうだな
お邪魔しま~す
樋口先輩が先頭きって中に入ってきた。
すると、一瞬だけ、私の頭をポンと撫でてきた。
…っ
(今の、愛ちゃんたちに見られなかったかな!?)
樋口先輩の後ろを見たけど、愛ちゃんと三島くんは、
なにやら話していたようで前を見ていなかった。
お兄ちゃんは、樋口先輩が入ってくる前にもうリビングのほうへと行ってしまっていた。
(よかった…。見られてなさそう…だね)
キョロキョロしていると、樋口先輩が耳元に顔を寄せてきた。
そんなビクビクしなくても、誰も見てないって
…ほんと可愛すぎ
(…せ、先輩のドアップ!!)
(耐えられないっっ!!!!)
後ろに愛ちゃんたちがいるにもかかわらず、
樋口先輩は私に甘い言葉をかけてくる。
可愛くないです…っ
(特別枠は嬉しいけど、
こんなのいつバレるか分かんないじゃん…!)
真由ちゃん、お邪魔するね~
う、うん!どうぞ!
三島くんも!
うん…
(気づいてないフリしたけど…)
(さっき、あの先輩…真由のこと頭撫でてたよな?)
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!