第3話

それでも時間は進んでて
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2018/05/09 07:09
「怪しいものではないよ!」
って怪しいでしょ!
「って言っても信じないか笑で、何してたの?」
「さ、桜を。桜を見てました」
「あぁ、俺も!桜綺麗だって聞いてさ」
「それだけのためにわざわざ病院に?」
「いやー、お見舞い」
考えてみれば当たり前か
ここにいる人ほとんど病人かお見舞いに来た人だもんな

バカって思われちゃったかな

「松村さーん、お時間です」
「はい、今行きます」
最近入ったばっかりの看護士さんが呼んでる

「押しますよ」
「大丈夫です」
「え、でも、こっちも仕事なんで、」
「平気ですっ!」
なんで断ったのか自分でもよくわからない
でも、あの人には自分の弱いところを見られたくなかった
でも、ここは外で
でこぼこ道もあるし、一番は点字ブロック
目の悪い人にはいいけど、車椅子には凶器
絶対つまづく

と、急に車椅子を押す力が軽くなった
「無理してるでしょ」
「む、無理なんか!」
「わかりやすい笑笑いいから俺に押されてなさい」
「…はい」
「部屋どこ?」
「301号室です」
「301?俺の行くとこの隣だあ!」
「え?」
「俺の友達がさ、サッカーばっかりやってる人なんだけどね。そいつが怪我したのよ、もちろんサッカーでね」
「隣の部屋ですか」
「うん、302号室」
「あっ…」
ここの病院古いからすごい隣の部屋の会話が聞こえるんだよね
302号室の人すごい声大きいから、ガンガン声漏らしてるの
「ごめんね、あいつ声でかいから声漏れすごいでしょ」
「っ!」
声に出てた?
「出てないよ。わかりやすいから」
「そんなにですか」
「うん、すっごい」
今気づいた
なんで私こんなに普通に人と話せてるんだろう

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