目の前でどんどん死んでいく人々、だんだん生きていくのも嫌になって自害してしまう人もいる。
私はそんな人々を眺めながらずっと生きていた。誰かと恋人になった。生き残れたけど相手が寿命で死んでしまった。
私は泣いても泣いても悔やみきれずずっとその人を待つことにした。いつの間にか人狼ではなくなっていた。役職は◯◯◯というものであった。ずっとずっと待ち焦がれた人を探して旅をして沢山の人と別れてを繰り返していた。いつの間にか感情と言うものは作られたものでしかなくなっていた。旅が終わり、家に戻ってもやはり虚無感しかない。家に戻ってくるとまた何人も遭難者がいた。やはりあのときみたいだ。
しかしロディやサンドラはいない…そう思っていた。しかし、私は目を見張った。サンドラやロディを見つけたのだ。二人とも私の屋敷に遭難してきたのだ。これほど嬉しいことはないだろう。
しかし、私に関する記憶はなくなっていた。だが魂の素質は変わらないままだったっから私は悲しくなんてなかった。大好きな二人に会えたのだから。しかし、また人狼ゲームが始まってしまった。前回と同じことにはしたくない、私は能力を前回に使い、二人を守ることにした。人狼の力を命がけで退けられる。そんな能力だった。やはり歴史は繰り返す。私とサンドラとロディが残ったのだ。他に数名いるがやはり誰かが死んでしまうのであろうか…。まあ結論的に言うと死ななかった。人狼は殺せなかったが明日殺せたらおしまい、そんな展開だった。だが異変は起きる。ロディの部屋が危ないことに気がついたのだ。人狼に襲われている。それは直感でわかってしまったことであった。すぐにロディの部屋に向かうと、人狼がロディを殺そうとしているところだった。
「危ない!」
反射的にロディを庇い、私の体には三つの傷がついた。人狼はどうやら殺せたことを確認して帰ったらしい。舌打ちもしていた。ロディを狙っていたのであろう。
「ジェシカ…さん?どうしてこんなことに…?」
「……君は覚えていないかもしれないけど、昔々一人の双子の狼がいたんだ。一人は奥深くの屋敷に幽閉されて……一人は……可愛がられて育った…二人は離ればなれであったけど、ある日を境に会えるようになった。婚約者を…つれてちょうどこんな日にね。だけど人狼ゲームでさ、姉は死んじゃったんだよね。その姉からの遺言で妹は…婚約者に…守られながら生きていたんだ。だけど妹は人狼で婚約者は…人間。あっけなく死んじゃったんだ…君をずっと探していた。覚えていないかもしれないけど…愛していたんだよ…」
「ジェ…シカ?…」
どうやら思い出してくれたのであろう。奇跡かもしれない。
「ごめん…ね。ロディ、現世では…幸せになってね…バイバイ」
こう言葉を残して、私は息を引き取った。この後どうなったかは分からないが、何十年後墓場では双子と男の笑い声が響く明るい場所になったと言う。
人狼から純愛になった少女の物語…END
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。