第4話

意味
166
2018/07/26 01:30
教室にあった熱が一気に外に逃げ行く。部屋の温度が2℃くらい下がったようだ。放課後になった。クラスメイトの多くは受験や就職活動のために早く帰路につく。しかし僕はそうではない。
「おまたせ」
今日もきちんとしたスーツを着ている。タチカワ先生だ。
「ねえ、なんで君はこの時期に補修なんて受けるのかな」
帰路につかないのは今から補修を受けるからだ。
「さぼりが目に余るからじゃないですか?」
僕は客観的事実を口にする。
「そんなサボってなにしてるの」
担任でおここまで言及し来なかったのに先生はしてくるのかと少し驚いた。
「オレンジジュース飲んだり、パフェ食べたりしてます」
タチカワ先生が呆れているのがわかる。
「学校って来る意味あるんですか?」
先生の目に急に力が入るのがわかった
「私もね、昔さぼり癖があったの」
さっきまでのふざけていた声のトーンとは違う。
「学校の来る意味を教えてもらったんだ」
心の何か大切なものに触れるように先生は語る。
「学校はねいずれ来る何かに立ち向かうために通うんだよ」
僕は将来に対する漠然とした不安があった。勉強したことでそれがどうにかなる気はしなかった。だから意味がないと決めつけてさぼった。自分の時間を作るとこじつけた。先生の言うことは支離滅裂なことだとわかる。しかし、馬鹿な高校生一人を何かに向かう気にさせるのは十分な言葉だった。
「じゃあそれを先生が教えてください」
僕はひどく偉そうに見えただろう。しかし先生は明るく頷いてくれた。

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