佐「こっち見て…。」
近づいてきた勝利君の手が私の頬に触れる。
見上げると優しく微笑んでる勝利君。
佐「あなたと仲良くなっていくうちに…、」
『…』
佐「もっと話したいとか、俺のこと見てほしいとか、そんな風に思うようになって、」
『…』
佐「…、あなたのこと好きなんだって気付いた。」
『えっ…、う、そ…。』
佐「好きだって伝えようとしたけど、なかなか勇気出なくって。そうこうしてるうちに2年になってクラス離れてさ。」
『うん、』
佐「言えないまま、卒業して。もう会えないと思ってた。」
『…』
佐「でもまた会えた。…健人があなたのこと好きだって知ったとき、今でもあなたのこと忘れてないって、好きだって気付いて。だけど、やっぱり勇気は出なかった。」
『…』
佐「健人を裏切ってまで自分の気持ちを貫くことなんて俺には出来なかった。だから真由を利用してあなたのこと忘れようとしたんだ。」
『じゃ、なんで…、好きだって言うの?』
佐「あなたのこと忘れられなかったから。」
『そんな、』
佐「卑怯だよね。真由と付き合ってるくせにあなたに告白だなんて。……俺はずるいヤツなんだ。」
『…ッ(泣』
佐「どうして泣くの?」
『だって、私も…、』
言い終わる前に勝利君に抱きしめられた。
佐「それ以上、言わないで…。」
消えそうな声で言われて、私は続きを言えなかった。
数分抱きしめられたあと、目が合って勝利君の顔が近づいてきた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!