真由が勝利君と付き合ってから、真由とは大学以外で会わなくなった。
〝私、勝利に依存し過ぎてる。″
そう、真由は言った。
時間があると、勝利君と会ってるみたいで。
私と会うと勝利君の話ばかり…。
早く勝利君のこと忘れたいのに。
蓋をした勝利君への気持ちが溢れ出してくる前に、初恋のいい思い出として閉まってたいのに。
バイトの帰り道、スマホに気を取られていると人とぶつかった。
『わっ!!…ごめんなさい!!!って、あっ!!』
その拍子に私のスマホが地面へと叩きつけられる。
ーーガチャン
「…いってぇー、」
聞き覚えのある声に落ちたスマホを拾おうとした手を止めた。
「こちらこそごめんなさい。…よかった、画面は割れてないみたい。」
相手は私の代わりにスマホを拾ってくれて、私の顔を見て驚いた。
「えっ…、あなた…。」
『しょ、り君…』
これが運命じゃないのなら、一体何というのだろう。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!