勝利君の隣を歩く。
憧れていた夢が今、実現した。
一緒に映画を観て、一つのポップコーンを一緒に食べる。
同じ場面で笑い、同じ場面で感動する。
だけど、肩が触れ合いそうな距離なのに、触れてはいけない距離で切なく感じる。
ふと、勝利君の横顔を見る。
綺麗な横顔だなぁ、なんて見惚れていると目が合った。
佐「…ん?」
『あっ、あー、何でもない…(照』
佐「もしかして、俺に見惚れてた?笑」
『ち、違う!!』
佐「ムキになっちゃって可愛いー!」
『…(照)』
佐「(笑)」
周りから見るとカップルに見えるのかな…。
一緒にいれて嬉しいのに、時間が過ぎていくにつれ切なさが大きくなってくる。
魔法が解ける時間が迫っているシンデレラのように、
この時間ももうすぐ終わってしまう。
映画館から出て駅に向かう。
もうすぐお別れの時間だ。
佐「…ねぇ、」
『なに?』
佐「行きたいとこあるんだけどさ、」
『ん?』
佐「あなたと。」
『えっ…、どこ?』
佐「着いてからのお楽しみ!行こ!」
手を繋がれ早歩きで駅に向かう。
繋いだ手から伝わる勝利君の温もりに泣きそうになった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!