真「あなた、大丈夫?吐いてない?」
席に戻ると真由が心配そうに聞いてきた。
『うん、大丈夫。なんか酔いも覚めた。」
真「そっか。もう22時だし、そろそろ帰ろっかってなってるんだけど。」
『そだね。』
真「あなた、桜山の方じゃん?健人がそっち方面だから送ってくれるって!」
『えっ、でも悪いし、1人で大丈夫だよ。』
中「ダメだよ。女の子なんだし1人は危ないから送らせて?」
真「素直に送ってもらいな〜。ってことで電車の時間もあるし、勝利君行こっ!」
佐「うん。じゃあ、また。」
真「ばいばい!」
勝利君、真由と帰っちゃった……。
中「あなたちゃん、俺たちも行こっか。」
『…うん。』
電車に揺られながら中島君と他愛もない話をして、あっという間に最寄り駅に。
『じゃ、私この駅だから。』
電車を降りて中島君に手を振ろうと振り返ると、中島君が電車から降りて来たと同時にドアが閉まった。
『あ、あの、電車……!』
中「家まで送る。やっぱり心配だから。」
『う、うん。ありがと。』
真剣な表情で言うから断りきれなくて。
帰り道
中「真由から聞いてる?」
『ん?何を?』
中「その感じじゃ聞いてないかな(笑)。今日何で集まったか。」
『あー、そういえば聞きそびれて聞いてない。』
中「知りたい?」
『知りたい!』
中「1年ぐらい前だったかな、真由からあなたちゃんとのプリクラ見せてもらって。こんなこと言うの恥ずかしいんだけど一目惚れしちゃったんだ、あなたちゃんに。」
『…』
中「その時はあなたちゃんに彼氏いたし、会わせてほしいって真由に言っても拒否られてたんだけど。あなたちゃん、彼氏と別れたって聞いたから真由に頼んで会わせてもらったんだ。」
『…え、っと。』
中「今日会ったばっかりで何言ってんだって思われるかもしれないけど、俺の一目惚れは間違ってなかったって思ったよ!あなたちゃんは想像してた以上の子だった!」
『いや、でも…。』
中「だから俺のことももっと知ってほしいって思うから、俺と友達から始めてくれませんか?」
『…友達からなら。』
中「ほんと!?、あーよかった!じゃあこれからよろしくっ!」
中島君が右手を差し出した。
私も右手を差し出して握手しながら、
『…こちらこそ、よろしくね。』
って返した。
家の前まで送ってくれて、終電間に合うのかなって内心心配だったけど。
何度もこちらを振り返りながら、手をブンブン振る中島君を見て私も自然と笑顔になる。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。