第48話

過去3
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2020/06/23 07:34
女中
奥方様!
気が付かれましたか!
あなた

…………やや子は……

女中
…………
あなた

やっぱり………か……

女中
奥方様!!
小刀を置いてくださいませ!
子は、死んでしまった




影月様も倒れられ




お腹の子もいなくなった




その日から私は空っぽになった




例えるなら────




"生き人形"




必要最低限の動きしかしなくなった




でも、唯一自分の意思で動けることがあった




自殺行為だった
あなた

…………

なんで駄目なの?




なんでなの?




分からなかった




ある日、影月様のお部屋から、こんな会話が聞こえてきた
産屋敷影月
長くないだと……どういうことだ……!
医者
非常に珍しい難病でございます……
治療法も分かっておらず…………
産屋敷影月
………あとどのくらい生きられる……?
医者
………最高でも、2ヶ月です
産屋敷影月
…………そうか
産屋敷影月
私は……今のあなたを一人にしてしまうのか…………
産屋敷影月
もしそうなれば……あなたはさらに心を病み、最後には自殺するだろう…………
産屋敷影月
それだけは……防がねば………
産屋敷影月
私を治せ……!
でなければあなたまで死ぬ……!
医者
………ひとつ……案がございます…………
それは……確実に生きられますが………
産屋敷影月
構わん!
何をすればいい?
会話が聞こえたのは、そこまでだった




それから数日後




あの医者が死んだ




影月様が殺したらしい




それから……ずっと自我が無いようだと………




だから私は、久々に自殺行為以外で動いた
あなた

影月様……!!

産屋敷影月
あなた………!
藤原 椿
藤原 椿
ぁ………あなた………ガタガタ
あなた

姉上……!

女中
お……お助けを………
女中
ガタガタ
あなた

影月様!おやめ下さい……!

そこには、何人も倒れていた




血塗れで、ズタズタだった




でも、生きている人間も多かった
産屋敷影月
あなた……離れろ……!
あなた

これ以上、人を殺めてはいけませぬ

産屋敷影月
今の私は鬼だ
私の血で人々を殺し、鬼に変えられる……
今の私は何をするか分からない………
だから……!
あなた

なら……私も鬼になりましょう

藤原 椿
藤原 椿
あなた………!ならぬ!!
あなた

鬼は、万年生きられる………
影月様をおひとり残してこの世を去る等嫌なのです

あなた

その代わり………ここにいる人たちは逃して下さいませ

藤原 椿
藤原 椿
あなた!!
あなた

アガッ……!!

そして、私は鬼になった




それっきり、姉上とは会っていない




それから直ぐに、例の物語の続きを知らされた




怨霊は人々を呪い殺した




その後、葬儀に怨霊は訪れ、本当の姿を晒した




正体は、天女だったという




天女は人々を生き返らせた




"命を大切にしなさい"




"死んだ後では遅いのだから"と言って消えたという




私の名前は………天女からとっていたのだ




その天女は、人々の心に光を指した




そんな天女の名から……




私は酷く後悔した




親がくれた名前を嫌ったことを




本当の意味も知らずに




自分の子は殺してしまったことも────




それらを忘れるために私は────



















鬼に堕ちたのだ

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