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お久しぶりです!今回は東リベの小説を書いてみました。
元々他で書いていたものなのでこういう形になってます😎続きは進める気になったら書きます。私続きモノ全然書けないので…()しかも文字小さいのが申し訳ないです…トホホ…泣
橘日向♂(1)
ヒナ♂武です
※ヒナちゃん男体化というかもとから男です
※タケミっち愛され要素薄くあるかもです
※タケミっちがバイセクシャルです
誤字脱字がたくさんあります。ヒナちゃんとタケミっちは男同士で付き合っています。思い付き、原作を見つつ書き殴ったので話が上手くまとまっていなかったりするかもしれません…(泣)そこは温かい目で見過ごしていただければ幸いです!!そして原作を元に書いていますが、あくまでも二次創作なので原作とは一切関係ありませんです。頭を真っ白にして読むのをオススメします。
――――――――――――――
第1話 「始まり」
オレ、花垣武道!!26歳処女童貞恋人無しでバイ!!そこらのレンタルビデオ屋で働いているフリーターである。ちなみに、自分を一言で表すと「社会不適合者」だ!!
…そんなオレにも前に一度恋人がいたことがある。橘日向という同級生の男。
全盛期だった頃の不良のオレ。
一度、勇気を一生分振り絞って彼に告白した。「前から貴方のことが好きでした!!付き合って下さい!!」と。
彼は男女問わずモテた。そしてイケメンだった。すべてにおいて。
顔がいいのはもちろんに性格やステータス、匂いなど(すれ違い様にほんのり甘い匂いがした)ほんとにすべてがイケメンだった。そんな彼に心底惚れ込んだ。
その時はあまりバイと言うものは知られておらず、ネットもあまり使えなかったため詳しく知れなかったし、そもそも男同士の恋愛に偏見が多かった。しかし彼は違った。流石は神と知られる男。
けれどフラれたらフラれたで潔く諦めるつもりだったのだ。
「いいよ」
そんな言葉が聞こえた時、恥ずかしさと嬉しさで死にそうだった。
そして照れくさそうに笑う彼はオレのハートを見事にぶち抜いてくれたのだった。
しかし、彼とオレでは世界が違った。
キラキラ輝く彼と、彼の周り。それに比べてオレはどうだ?オッサンの足の指と指の間に挟まっているごみ粒と対してそう変わらない。
そして中学卒業と同時に家を出たこともあり、疎遠になってしまった。
しかし、今テレビに映っている名は
橘日向さん(26歳) 死亡
―――――――――――――
今日も築ウン10年のボロアパートの一室で目覚め、煎餅布団から起き上がる。
そして、隣人に怒鳴られつつ爆音で鳴るアラームを消し、テレビを点けたニュースには事故現場の映像が映し出された。
「昨晩、○○町の○○祭りの最中、屋台にトラックが突っ込み、五人の負傷者と二人の死亡者が出ました。近頃、東京卍會の抗争は激しくなっており、ついに一般人のまで被害が――」
ニュースキャスターは時折資料を見つつ淡々と言葉を連ねる。オレはそれを他人事のように、横になってポテチを食べながら映し出される事故現場の映像をボーッと見ていた。そしてニュースキャスターは犠牲者の名前を上げていく。
その時だった。聞き覚えのある名前が聞こえたのは。
「死亡したのは、橘直人さん25歳と――橘日向さん26歳です」
「橘日向」オレの初めてできた、かつての恋人。その橘日向が、死んだらしい。
「……」
逆さにしたままのマヨネーズの容器から、マヨネーズがぼとりと服に落ちたのに気がつくのは遅くなかった。
――――――――――――――
「あのー言いましたよねー?」
午後6時のレンタルビデオ屋。
中卒のオレが働ける数少ない仕事場。と言っても、バイトだし時給も低いのだが。
「DVDは返却されたらすぐ陳列ー」
「…すいません」
「ハイ謝るだけー」
店長はいつもこんな調子。オレは仕事が出来ないからまぁ仕方ない。
そしてオレは我が家のボロアパートに帰る。安月給でも払える家賃だから、結構前からお世話になっている。帰る家があるだけ感謝だ。
と思いながら駅のホームで電車を待つ。それにしても今日はついていない。
朝、大家さんから大声でテレビがうるさいからって戸を叩かれたし、アラームはなぜか爆音に設定されてあるし、先ほど駅に行く途中、やけに高級そうな車を見せつけられるし。そんで小学生に絡まれた。
(オレ、いつからこうなっちゃったんだろ…)
「壁の薄いボロアパートに、6歳も下の店長からバカ扱い。恋人は人生で1人…それも中学の時。極めつけはドーテー。」
―……オレ、どこで間違えたんだ?
なんて思いながら顔に手を当てる。すると突然、後ろから手で誰かに押された。
勢いよく背中を押されたオレはホームの下に落ちてしまい、「え」と力なく声をこぼす。電車が目の前まで迫って来る。周りからは悲鳴。
「ウソ…」
そのとき頭に浮かんだのは両親でも若き頃の友人でもなく、恋人だった橘日向だった。
――――――――――――
「――…お…い、…おい、タケミチ」
自分を呼ぶ声がする。懐かしい声。
「タケミチ、なにしてんだよ」
ハッとして目をあける。
顔を上げると、そこには懐かしい顔が並んでいた。
「行くぞー」
え、オレなんで生きてるんだ?
というか目の前になんで懐かしい顔が4つも…!?
チンコばっかいじってたマコトにメガネかけてりゃ頭いいと思ってる山岸、番張ってたアッくん、そして幼なじみのタクヤ!!
「えっ」
とりあえず電車を降り、通りにある鏡を見て疑った。だって、中学2年生の頃のオレがいるんだもの。
「なんだ!?このだせぇヤンキーはぁ!!」
急いでポケットをまさぐり、出てきたのは500円玉とガラケー。
そしてガラケーを開き、日付を確認する。
「2005年7月4日…?12年前の今日!?」
…これ、走馬灯ってやつなのかな。
なんちゅーリアルな走馬灯だ…!?悲しくなってくるんだが!?
「いやー、それにしてもタケミチのイトコが渋谷三中のアタマでマジよかったよ」
ん?イトコ?渋谷三中?
「3年が出張って来たらマサルくんの名前出せばいいもんなー!」
どういうことだ。ちょっと待ってくれ、情報を整理したい。
山岸がオレを不思議そうに見つめてくるが、今オレは情報整理で忙しいんだ。
マサルくんはたしかオレのイトコで、渋谷三中の3年生。でもマサルくんがいるとなにがいいのかよく分からない。
「ねぇ、マサルくんがいるとなにがいーの?」
なんて4人に問うと神妙な顔をしてお互い顔を見合わせたあと、応えてくれた。
「おいおいタケミチィ!」
「アタマ大丈夫かぁー!?」
「喧嘩売りに行くんだよ!渋谷三中の2年対溝中2年で戦争だ!!」
だいぶ色々言われた気がするが、どうやら今日この5人で渋谷三中の2年に喧嘩を売りに行くらしい。得にやる気なのは山岸とマコトだ。
「て、ことはいまから喧嘩売りに行くの!?」
と言うと、みんながコソコソ話をし始める。
なにか変なこと言ったかな…?
「オイオイ、ウチはナメられてんだぞ?やるしかねーだろ」
タクヤがそう言うがオレにとってはそんな理由で…?という感じだ。
「ビビってるフリとかいらねーし!いつもみたいに出会い頭裏拳かましちゃうんだろ!?」
そう言って山岸は裏拳?をかます身振りをする。
「タケミチ、イケイケだもんなー」
待て待て待て!!早い早い展開が早い!!
というか…、確かにこんなことあった気がする…。だんだん思い出してきた。
たしか、渋谷の中学に乗り込むために、番張ってるイトコのマサルくんに話通しに行ったんだっけ…。
「…喧嘩…か…」
喧嘩??ちょっと待って、喧嘩なんて10年以上してないぞ!?痛いし、血でるよ!?怒鳴られるよ!?あたりどころ悪かったら死ぬよ!?怖いよ!?やだよ!?
ヤバいチビりそう……。
てかオレの周りってこんなイケイケだったっけ!?ついていけないよ!!けどこれは恐らく走馬灯だ!落ち着け!!
と、言いつつ内心緊張しているオレには、正直笑えてくる。
「おっかしーなぁ…2年がいねーぞぉ?」
「声かけても1年と3年ばっか!」
「集団ボイコット?」
先ほどの出来事から約20分ほど経ち、オレたちは公園に来ていた。
初夏前ということもあり、あたりはじめじめとしていて蒸し暑い。
しかし、オレはひとつ気になることがあった。この公園を覚えていることだ。
嫌な予感がする。
「まぁ渋谷の不良なんてよ。所詮、"小洒落たギャル男崩れのシティボーイ"だろ?」
そう言ってアッくんが立ち上がった瞬間、後ろからオイ!!という男の大きな声が聞こえた。
「ウチの2年嗅ぎ回ってるのってお前ら?」
そう言って後ろに振り向くと、明らかに厳つい「ザ・不良」という雰囲気を漂わせた男たちがやって来た。人数は7人。
こいつらは…3年。中3にして暴走族、振り切った本物の「不良」。
なぜ知っているかって?この出来事に見覚えがあるからだ。
「2年はよぉ…修学旅行だ」
そう言ってタバコに火をつける厳つい渋谷三中の3年生たちに、オレたちは黙り込んだ。そしてそいつの後ろにいる男たちの1人が突然、「とりあえず一人づつタコ殴りにしてやるから並べ」と言う。
その言葉を無視し、勇気ある山岸が口を開いた。
「…あ、アンタら3年っスよね?…オレら、3年の番張ってるマサルくんに話、通してますよ」
その言葉に男たちは一瞬黙り、突然笑い出しながら後ろにいた少年に「オイ!マサルぅ!!」と大きな声で呼んだ。
そしてここにいる渋谷三中の男たち、全員分のジュースを買ってこいと少年に託した。
少年は…オレのイトコであるマサルくんだった。
「あ……うん!お金は?」
オレ以外の4人もあの番を張っているというマサルくんがそいつらにパシリをされていることに驚き、固まってしまっていた。
「この"コブシ"が一発百円な!?」
男の1人は拳を握ってマサルくんに見せ、殴られるのを恐れたマサルくんはそそくさとジュースを買いに言ってしまった。
そう、マサルくんはパシリだった。
1個下のオレに見栄を張っていたんだ。
ビビった上に頼み綱を失ったオレたちは…半殺しにされる。
「「ずびばぜんでじだっ!!!」」
結局、オレら5人は男たちに殴られ蹴られ、ボロボロにされた。そして、アッくんとオレは2人で土下座して謝っている。一方、男たちは満足そうにニヤニヤと笑っていた。
「気合いもなんもねーダサ坊がよー。不良語ってんじゃねぇぞコラ」
(……痛ぇ…)
マコトはなんにも言わず倒れているし(意識はあると思う)、山岸は体を丸めて泣いているし、タクヤは静かに座り込んでいた。
「オマエら今日からオレら"東京卍會"の兵隊な」
「しっかり働けよ」男の1人はそう言い残し、その場から立ち去っていった。
東京卍會……
そうだここからだった。
いいように使われる地獄の日々。こいつらもみんな…。
そして中学卒業と同時に、オレは逃げ出した。
1人で暮らしてバイトを始めて…。でもなんにも上手くいかなくって。謝って謝って謝って謝って謝って。
謝りつづける人生だった。
最悪だ。人生最後に最悪な走馬灯。
「わかったよ神様!!オレの人生クソだって言いてぇんだろ!?」
地面に這いつくばっていた体をぐんと伸ばし、顔を上げて天に向かって叫ぶ。だが、当たり前のように返事は来ない。
『花垣君はきっと成功する』
どこかから声が聞こえた。――橘…日向の声。
橘……東京卍會……。
「あれ?」
東京卍會…こいつら…、橘が死んだのは12年後のこいつらのせいだ!
公園から去る男たちを見ながら思う。
まぁ……分かったところでオレには関係ない…か…。
「橘ってどんな顔してたっけ?」
忘れてしまった。元恋人の橘日向の顔を。そりゃあ12年も経てば、顔も忘れるだろうが。でも、今は橘がどんな顔をしていたのか分からない。みたい。会いたい。
そして無意識のうちにオレは橘の元へと駆けていた。
「ここだ!!」
電車へ乗り、地元へと帰ったオレは、橘の家を探して走り回っていた。しかし、幸いにも放課後下校を共にしていたことがあり、なんとなくだが橘日向の家を覚えていた。
橘日向が住むマンションへと出入口から入り、ポストから橘の号室を名字で探し、エレベーターで向かう。インターホンを2回押すと、橘日向と思われる人物の透き通る程よく低い声が聞こえた。懐かしい声だ。
「はい…あれ!?花垣君!?」
驚く彼に小さく返事を返す。タンタンと部屋の奥から足音がしてしばらく経つと、ガチャッと音がして、玄関の重い扉が開かれた。
「花垣君!またケンカ!?」
出てきたのは自分よりも背が高く、一度見れば女の子よりも綺麗なんじゃないかってぐらい整った顔。鼻筋はスラッと通っており、まつげは長い。しかし、鍛えられた体と身長でなんとなく男だとすぐ分かる。オレンジ色に近いブラウンの髪は短く、少し前髪は長く揃えられていた。口元にホクロがあるのがチャームポイント…だと思う。
なのにTシャツとスウェットと、ラフな格好でもカッコいいのはなぜだろうか。
「たち…ばな?」
12年ぶりの橘日向に、オレはフリーズしてしまう。
懐かしい。こんな顔だったのか。橘は。
「………橘…ヒナタ?」
本当に橘日向なのかオレはもう一度確認してみた。だけど潔く無視され、喧嘩したことを注意された。
そのときオレの頬に生暖かい何かが伝った。その正体は、オレの涙。
「あれ!?なんで…なんで泣いてんだ?オレ」
そう言ったあと橘に謝りつつ、もと来た道を振り返って戻る。
「帰るよ!顔が見たかっただけだから」
いまだに溢れ出てくる涙を乱雑に拭う。
「うそ。なんかあった」
「いつもの花垣くんじゃないもん!」橘はそう言い、オレを引き留める。その場に立ち止まり黙りこけていると橘に後頭部に手を当てられ、顔をグイッと引き寄せられた。男子同士なのもあるから距離が近いし(と言っても恋人だから恥ずかしい)、橘の方が背が高いから見下ろされる形になってなかなか恥ずかしい。ていうか「もん」って可愛いな。イケメンが言うギャップよ。
「ちゃんとゆって!!君の事はなんでも知りたいの!」
そう言って橘はオレに顔を近づける。近い。
近い近い近い近い近い近い近い近い!!さすがに近いです橘クン!!
オレの心臓が持たない。
「カレシなんだよ!」
真剣な顔。少し顔に当たる橘の吐息。死。
(うわぁ、なんでイケメンってそんなこと平気で言うかなぁぁ!!なに!?陽キャってみんなこんな感じなの!?)
……一旦落ち着け自分。ここは「無」で行こう。
「バカやろう」
「…ゴメン」
…そうだ。いつも怒られてばっかだった。でっかくて気が強くて。
「バイバイッ明日学校でねっ」
"バイバイ"って明るい言い方が。好きだった。
そんなこと思い出したら、泣いちゃう。
懐かしくて、愛しくて、かっこよくて、心強くて。
暗い夜道の中、熱くなる目尻に涙を溜めながらオレは馴染みのある近くの公園へと向かった。
キィキィと不規則に鳴る錆びたブランコ。1人感傷に浸っていた時。
公園に怒号が響き渡った。
「これで全部じゃねーだろ!?」
「ウソこいてんじゃねーよ!跳んでみろ!」
チンピラにそう言われ、素直に絡まれていた少年は縦に跳んだ。
すると少年のポケットからチャリンチャリンと音がした。
「まだポケットに入ってんじゃねーかよっ」
「全部出せコラ」
「早くしろやぁ」
(うっせーなぁ…人が感傷に浸ってんのによーー!)
「もたもたしてんじゃねーよ」
男がそう言った時、「おい」と武道は男に声をかける。
男はあン?と言いつつ、声のした後ろに振り向く。すると男は思いっきり武道運針のグーパンで見事にやられる。
「うっせぇんだよボケぇエエ!!!」
男が倒れるとそこにいた少年と男二人はあまりに突然な出来事に口を開ける。
「さっきからゴチャゴチャゴチャゴチャよぉー」
そう言い、武道は公園のゴミ箱を漁ってビール瓶を取り出す、それを叩き割って男二人に割れたビール瓶を突きつける。
「オレは今サイキョーにイラついてんだよ」
「消えろ殺すゾ」そう言うと男2人は気絶した男を担いで、謝りながらそそくさとどこかへ消えていってしまった。
残ったのは小柄な少年といまだ割れたビール瓶を持った武道。
少年は少し武道に怯えていたが、帰れと託すと律儀にお礼を言ってきた。カツアゲから助けたとでも思っているのだろうか。
武道は1つため息を溢すと、少年に教えを語り始めた。
「は…はい!!」
自分で"度胸"やら"覚悟"やら言ったはいいが、その単語は武道の人生にに足りなかったものばかりでなんだか悲しくなってきた。
カッコつけるんじゃあなかった…。
「オマエ…名前は?」
そう言った瞬間、「橘」という言葉が出てきて驚く。
「橘直人です!!」
その少年はなんと、橘日向の弟だった。
「え!?オマエっ、橘の…弟!?」
「……?あ…姉ちゃんならいます」
「なんだよ早く言えよ!オレ花垣タケミチ」
「あ。もしかして兄さんの友達ですか?」
(橘ナオト…。そーだ12年後こいつも死ぬんだ)
それから、しばらくオレとナオトは公園のブランコで喋っていた。
と、言っても話す内容などこれっぽっちもないので、気まずい雰囲気が漂っていた。なのでなんとなく、
自身の兄が好きかどうか聞いてみた。
「え?嫌いですよ。自分の兄ちゃん好きな奴いませんよ」
ナオトは少し驚いたあと、ハッキリと嫌い宣言をした。
まぁそうだよな…。兄弟とかってそんなもんか。
しかし、オレは未来を知っているので、なんとも言えない。せめて、それまで後悔が無いよう過ごすまでだ。
「兄ちゃん…大事にしろよ」
そう言った時、ナオトは少し気まずそうにしていた。
だが、オレはそんなの気にせず続けた。
「オレはオマエの兄ちゃんが大好きなんだ」
「好きで好きでどうしようもないぐらい好きだった。今日それを思い出したよ」
ナオトには分からなさそうだが、そりゃ分からない。
「よくわかんねー話だよな?ぶっとんだ話だけどよ。2017年の今日、おれ駅のホームから線路に落ちてさ。死んだと思って気づいたら中学生。12年前の今日だった。これってなんて言うの?」
「タイムリープ!?」
「そう!!それそれ!」
そう言ったあと、オレはブランコから降り、月明かりが照らす空を見上げる。
「長ぇー夢観てるだけかもしれねー…けどさ、きっと…神様がもう1度橘に会わせてくれたんだ」
「え?どーゆー事?」
ナオトの声がひどく困惑しているのが分かる。そりゃあ会ったばかりの人間にこんなこと言われたら戸惑うわな。オレはナオトの方に振り向く。
「12年後の7月1日、オマエの兄ちゃんは死ぬ」
「そん時、オマエも一緒に死ぬんだ。"2017年7月1日"!この日を覚えとけナオト!!そんで兄ちゃんを守ってくれ!!」
もしこれが現実なら、オレは未来を変えたい。
アイツの死をテレビの前で見るしかなかった、あのやるせなさ、あの悔しさを。やり直したい。
そう思いながら、ナオトに己の手を差し出す。
「………うん…わかった」
ナオトは動揺しつつ、オレに返事をした。そして握手をしたときだった。
『ドクン』
「気がついたか!?」
目を開け、起き上がると男の声がした。見るかんじ駅員さんかな。
さっきまで夜の公園にいたから、ここがどこか分からない。
「……ここは…」
駅員さんにそう問うと駅の医務室らしく、自分はそこで寝ていたようだ。
「君は駅のホームから線路に落ちたんだ」
そう言われて側にあったカレンダーを見つけ、ふと見る。
そこには「2017年7月4日」そう記載されていた。そこで、自分は先ほどまで夢を見ていたのだと知らされる。
「あんな状況でオレ助かったのか!?ケガ1つしてねーぞ!?」
しかしおかしい。自分が無傷なのだ。
目の前に電車があったのに、なんでだ??
「少し2人で話をさせてもらってもいいですか?」
その時、スーツに身を包んだスマートな若い男性が現れた。
どうやらオレと話がしたいらしい。駅員さんはそれを快く了承した。
「彼が君を救ってくれたんですよ!」
爽やかな笑顔でそう言う駅員さんはその場から立ち去り、その男が名乗る。
「橘ナオトです」
その名前に心当たりがあった。橘の弟だ。
「2005年の7月4日。ボクの運命を君が変えた。」
「え!?あれは…現実?」
だってオマエは死んだハズじゃ…
「君はタイムリープしたんです!!
そしてボクは生き永らえてタケミチ君を助けた。タケミチ君はタイムリープした事で…未来を変えたんです!!」
真剣な顔つきでナオトが言う。その顔は冗談を言っているようには見えなかった。
心臓の動く音が少し早くなった。
それをいい終えたあとナオトは折り畳み式の椅子へ座り、話を続けた。
「タケミチ君…12年前の今日。君はボクにこう言いました。」
"兄ちゃんを守ってくれ"
「ボクは必死に勉強して刑事になりました。」
「刑事!!」
「兄を守るために」
それじゃあ橘は生きているのか?唐突にそう思い、ナオトに問う。
しかし、返事は望んでいない悲しいものだった。
ナオトは黙り、頭を下げた。
「すいませんタケミチ君。兄は死にました。」
「考えられる手は全て尽くしたんです。ても…でも!!」
そう言って悔しそうにするナオトに、武道は少し哀れみを覚えた。
その時バッと突然ナオトは顔を上げる。
「ボクに協力してください!!君なら!兄さんを救える!!」
必死に力強くそう言うナオトに、オレは思わず息を飲んだ。
「俺たちが…橘を…?」
続く(たぶん)
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。