大毅は洗濯物を干して、私は畳む。
お正月から何やってんだかって思うけど、
この感じが心地よかったりする。
冷蔵庫へ走る大毅。
そう言って出してきたのは…
もう嫌な予感しかなくて…
卵なんかなくてもいいのに…
ソファーに腰掛ける。
大毅の家。
生活感はあまりなく、
大毅の実家の部屋が大きくなった感じ。
しばらく家に帰ってなかったのか、
机の上には書類が山積みで。
まとめるだけまとめとこうと、
書類を持ち上げると、1番下に便箋が…
それは私宛の手紙だった。
“あなたへ
連絡できずにごめん。
ジャスの事も任せきりで、何もできなくてごめん。ほんま迷惑かけて、ごめんなさい。
ジャスには悪いけど、写真撮られたのがあなたやなくてよかった。
あなたやったらって考えたら、怖くて震えたわ。
それとな、今回の件でメンバーや、応援してくれてるファンや、事務所の人や、仕事先の人、沢山迷惑かけてしもて…
アイドルとしての自覚が足らんかったと思う。
どうしたらええかわからんで、何もできんかった。無力で、未熟で、ほんま情けない…こんな自分がほんま嫌や。
でな、あなた、これからは迷惑かけた分、仕事で返したいねん。信頼を取り戻したいねん。
ほんま勝手やけど、ちゃんと仕事ができて、恋愛ができるようになるまで待っててほしい。
離れたくないし、別れたくないし、一緒にいてほしいし、ずっとずっと隣にいてほしいねんけど、今はあかんねん。
俺に自信がつくまで、アイドルとして胸張れるまで、待っててくれへんか?
何かあってもあなたを守れるくらいになるまで待っててくれへんか?
て、勝手やな…勝手すぎるわ。
いつになるかわかれへんのに…
やっぱ、待たんくてもええ。
お前の人生やし、お前の自由に、
お前の自由に?その続きは?
身体の力が抜けて、
持っていた手紙はひらひらと床に落ちた。
拾う気力もなくて、
しばらく立ち尽くす…
あの笑顔の奥に、
こんな不安や悲しみがあったなんて…
気付けなくて、ごめんね。
私は手紙を拾いあげ、
そっと元の場所へ戻した。
そして2人で懐かしのニラーメンを食べる。
それから2人で洗い物をして、
ソファーでくつろぐ。
そういうと、私の膝の上に頭をおいて、
と嬉しそうだ。
かわいくて、大毅の頭をよしよしすると、
目を閉じ、腕を組みながら、
眠ってしまった。
穏やかな時間が過ぎる。
大毅…
つらかったね…
苦しかったね…
頑張ったね…
あの時、側にいてあげられなくてごめんね…
すると、パッと目を開き、
そう言うと、私をひょいっと抱き上げた。
そして、ゆっくりベッドにおろすと、
横にぴったりくっついて、
抱き枕のように私を抱きしめ、
寝てしまった。
スースースースー…
寝息さえ愛おしく感じる。
私の大切な…
大切な人…
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。