練習中に、職員の人に呼ばれた。何かと聞けば、社長が話があるらしく。
十中八九デビューがダメになった、とかなんだろうなぁ…と考えながら社長室のドアをノックすると、社長が難しい顔をしながら部屋の中をうろうろ歩き回っていた。ということは、そういう事だろう。
……まあ、最近オンニ達の雰囲気も暗かったし、宿舎からオンニ達の物が少しずつ無くなっていってたし、そんなに驚くことではないな。
意外にも、涙は出なかった。3、4年も頑張ってようやく手に入れた……はずのデビューだったのに、1粒も。まあ、薄々気付いていたから、かな。
元々7人組でデビューするはずだったのに、1人、また1人と少なくなっていって。最終的に私とオンニ2人が残ったけど、白紙になった、ということは2人とも辞めていったのか。
そういや、リノオンニがもうすぐ日本にいる両親に会える、と言っていたのはこういう事だったのか。
……本当は悲しいはずなのに、そんなことを冷静に考えられる自分が少し怖くなった。
社長はそこまで言うと、口を閉ざした。何か言い難いことでもあるのか。……デビュー白紙を伝えられたんだったらそれ以上に伝えにくいことはないだろ。
あったわ。普通に。
ここの社長……ハン・ソンスは、何を考えているのかもよく分からず、アイドルをよく放置するような適当な人間だとわかってはいたけれど、今回は本当に意味がわからなかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。