第5話

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2021/03/23 03:40
もうすぐ桜の話題がテレビでも流れる頃。




今日はおかんが同席してあなたと会う日。


メンバーからは『大丈夫、伝えておいで』と背中を押して貰った。



小瀧望
早いかな…
俺はカジュアルすぎない格好で待った。
おかん
おかん
小瀧望
……あれ?
あなたおらんやん
おかん
おかん
お店で待たせてるから行くよ
小瀧望
あ、おん
連れてこられたのは洒落た個室のカフェ。



あなたのスキャンダルを避けたものなのか俺への配慮なのか。


俺……なわけないか
おかん
おかん
しっかりね
個室に案内されると俺は目を疑った。


そこにはヘアメイクもしっかり決めてるものの黒一色。


俯いている。
小瀧望
………
おかん
おかん
あなた、待たせてごめんね?
あなた
……いえ
小瀧望
久しぶり…
覚えてる……?
あなた
………
覚えてるわけないか……
あなた
……7周年…おめでとう
小瀧望
………ッ
聞いてくれてた…


俺がデビューしたのも知ってくれてた。



おかん
おかん
2人で話しなさい。終わったら連絡して。
そう言っておかんは出て行った。



流れる時間と沈黙。
























俺には背中を押してくれるメンバーがいる。

小瀧望
ごめん
あなた
……
小瀧望
守ってあげられなかった…
避けてごめん
あなた
……私のせいでのんが何か言われるの嫌だから
小瀧望
……
あなたの方が俺を守ってくれてた。
小瀧望
何で…
あなた
……
小瀧望
俺が守らないといけないのに…
あなた
守られていたよ
小瀧望
あなた……
あなた
のんが頑張ってるから私…
私…
言葉に詰まったあなたを恐る恐る見るとポロポロ涙を流していた。



子どもの泣き方のようにしゃくりあげてるけど静かに泣いていた。


咄嗟に抱きしめてしまった…


あなた
のん…(泣)
何度も俺の名前を呼びながら泣いてるあなたは今まで溜まってた辛かったことを吐き出しているように感じた。
小瀧望
ごめんな…
抱きしめて背中をさすってから数分。


もう一時間以上経ったと思うぐらい長く感じた。

小瀧望
やっと会えた……
あなた
………
あなたが俺の服を握った時
あなた
ごめんね…
小瀧望
もう謝るのやめよ
あなた
……でも
小瀧望
もう隠さないから……
俺、もう逃げないから
あなた
逃げる……?
真っ赤になった目で上目遣いで見てきたあなたの頭を撫でながら
小瀧望
今度こそ、あなたを守りたい。
また小さい頃のようにあなたといたい
あなた
……
小瀧望
俺のこともう一度信じてほしい……
あなた
……
都合良く言うなって言われても仕方ない。
小瀧望
俺にもう一度チャンスください…
あなたとの時間を戻していきたい。
あなた
………でも私なんかいたら…
あなたはいつも最初に「私なんかいたら……」と言う。


もう口癖になってるから直らないと思うんけど…


それを俺が前向きにさせたい。


小瀧望
もう私なんかなんて言わせたくないねん…
あなた
のん……
ごめんなさい…
私なんか……
小瀧望
あかん!
あなたがいなくなる方が俺は嫌や!!
あなた
(ビクッ)
小瀧望
ごめん…
ずっと…
ずっと…行方不明って思ってた。
警察にも行って…
生きててほしいって……
虫が良すぎるのはわかってる。
自分勝手ってのもわかってんねん。
俺が避けたからあなたも避けてたんやろ?
俺と会わないように……
あなた
……私なんかがいたから何か言われたのかと思って…
小瀧望
言われてないよ
俺が……
あなたから逃げた…
あなた
そっか……
小瀧望
でも、俺はもう逃げない。
あなた
無理しないでいいよ
私なんかいたって…のんに迷惑かけるだけだから
小瀧望
迷惑なんかやない!
頼む……
もう俺の前からいなくならないで…
あなた
……私はのんに幸せになって欲しい
小瀧望
……
あなた
……ごめん
会っちゃいけなかったんだよ…
小瀧望
……




あなたはそのままカフェを出て行った。







何で俺は追いかけないん……











あなたの『幸せになって欲しい』の言葉がずっとリピートされて動けなかった。








































ほんまにもう会えないん……?

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