次の日 ______
飛雄に振られたけど
思ってるより落ち込んでない私がいた。
今日は青葉城西高校との試合。
準決勝だ。勝てば、決勝に進める。
白鳥沢の試合はさっき終わったから
今は烏野の応援席に来ている。
そう言って千聖はみんなの元に戻って行った。
試合終わりに白布が来た。
次の対戦相手の偵察だかなんだか言って
私の横に座った。
川西くんは五色くんを呼びに戻って行った。
私は飛雄を指さして
そう、もう違う。
あの頃の飛雄とは、違う。
彼を見ると少し悲しそうに笑っていた。
川西くんが五色くんを連れて戻ってきた
(どうしたんだろう…)
白布のことを気にかけてるとホイッスルが鳴った。
烏野 - 青葉城西 の試合が始まった。
______ 勝ちますように…
青葉城西は県内屈指の強豪校。
そして ______________
飛雄の中学時代の先輩である
及川 徹(おいかわ とおる)くんと
岩泉 一(いわいずみ はじめ)くんがいる。
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試合はフルセットの接戦で1-2で烏野が負けた。
私の目からは涙が溢れていた。
自分でもびっくりしている。
泣きたいのは飛雄のはずなのに、どうして
(なんで止まってくれないの…っ)
飛雄を見るととても悔しそうな顔をしていた。
翔陽も、同じように。
あれ、翔陽ってあんな顔するんだ…
あんな暗い翔陽、見たことないな…
白布が私の涙を拭ってくれた
真っ直ぐ私を見る目から決意が伝わってきた。
目を逸らさず真っ直ぐこう言われると
照れてしまう。恥ずかしい。
と、いうことは…。
白布が、私に言いたいから言った。と言った。
もしかして、白布…
白布の目は本気だった。
私に伝えたいこと、っていうのは
なんとなくどんな事か分かった。
でも、今の私にその気持ちを受け入れることは…
悲しげな微笑みが溢れていた
彼は、私の気持ちを知っているから。
飛雄が好きだった事も
翔陽に告白されたことも
彼は全部、知っていたのだ。
そう言って彼はアップ会場に向かった。
川西くんと五色くんも一緒に。
私はそう言って1階に下りた
千聖は呆れたようにため息をついていた。
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飛雄も翔陽も1階におらず
私は彼らを探しに外に出た。
すると2人で喧嘩みたいなことをしていた。
私は二人の元に。
二人同時に謝ってきた。
彼らは俯いていた。
いつも元気な彼らが暗いのが嫌だった。
そりゃ、負けて悔しいと思う。
でも、この"負け"を次への原動力にしてほしかった。
彼らは驚いた顔で私を見た。
まだ完全に吹っ切れたわけじゃないから
こんなことを言われると、すこし期待してしまう私がいた。
飛雄は天才と言われてきたけど
翔陽と出会って少し変わった気がした。
中学時代の飛雄は一人で抱え込む事も多かったから、こうやって正面からぶつかり合える相方みたいな存在は、とても大きいんじゃないかなと思う。
これは私の本心だった。
彼のプレーに見入ってしまった。
かっこいい、ずっと見ていたいと思ってしまった。
彼の目が光る。
憧れのようだと言われて嬉しそうな顔だった。
少しでも、元気になっただろうか。
少しでも、彼らの原動力になれただろうか。
もし少しでも、そうなれたらいいな。
私はそう思いながら、白鳥沢の応援席に戻った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。