私の抱いた疑問は絢野さんが聞いてくれた
極めて可愛く言っているつもりだろうが、自分を選ばなかったことに怒っているのだろうか。頬がひくついていた
志麻くんはいつもより真面目な顔をしてそう言ってくれた。
さすがに辛くなったのか、目元を腕で覆い隠し、絢野さんは出て行ってしまった
志麻くんはドアを見つめ、押し黙っている
いくら沢山告白されるからといって、振るのに慣れることなんて、ないのだろう
ましてや、優しい志麻くんのことだ。普通の人よりも辛さは大きくなるのだろう。
私だって、いくら絢野さんがイジメをしてきているからと言っても少々同情してしまう。
こんなこと思ってはいけないのだろうが、今はそれ以上に志麻くんが好いてくれていることが嬉しかった
...だが、自分でつけた腕の傷を知られ、身体中の痣を見られることが以前にも増して怖くなった。
ふと、自身の太股を軽く触る。
それだけのことでズキズキと傷んだ。
よほど蹴られたのか...毎回同じところを蹴ってきているのか...既にわからなくなっていた
ただ痛みだけがそこに事実として残っていた
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。