不意に肩に温かい液がかかる。それは志麻くんの涙だった。
志麻くんは泣いていた。いや、私なんかの為に泣いてくれていた。
__あぁ、私...なんて...__
幸せなんだろう。
そう思った。私の為に泣いてくれている人が居るなんて、と。嬉しさと安堵が混ざって、涙となって零れ落ちる。ポロポロと零れて、溢れて...止まらなくて...でも、その涙は私の中の負の感情を吐き出してくれているようで不思議と不快感は無かった。
どれだけ時間が経っただろうか。窓から入る光はオレンジ色に染まっていて、濁りのない綺麗な色をしていた。
そう言うと、私の肩に顔を埋めていた志麻くんがゆっくりと顔を上げた。
その顔からは心の底から心配をしてくれいるのが伝わってきて、胸を締め付けられる。
そして、目は若干赤く腫れていて、頬には涙が伝った後が残っている。
その涙の後を消してしまいたいような...けれど、私を想ってくれた証を消したくないような衝動に刈られ、彼の頬を愛しく、そして優しく撫でた。
志麻くんを安心させたくて、微笑んで見せる。
その時の志麻くんの声は心から絞り出したようで、少し掠れていた。
そんな彼を今度は私が抱きしめる。
少しして、志麻くんは顔を上げた。
そう言って笑った志麻くんは目に少し涙を溜めて、八重歯を見せていた。
いつもの志麻くんに戻って私は安堵した。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。