僕は初対面の人と話すことが苦手だ。
だから、できるだけ微笑んで、その場をやり過ごす。
いつもヒョン達が一緒だから、コミュニケーションはヒョン達に任せて、全力で影を薄くする。
それに慣れてしまったからか、自分の変化に自分すら気づかなかった。
今日PDさんに挨拶に行く。
よく番組に呼んでくださる偉い人だから、撮影前には毎回挨拶をしている。
いつも通りヒョン達の後ろについて微笑んでいた。
はい、
それだけの声がなぜかつっかえた。
………出ない。
声が出ない。
声帯どころか口も、体も動かない。
焦りと不安がどっと押し寄せた。
出ない、動けない。
どうしようどうしよう
ウヨニヒョンがそう騒ぎながらも、僕の手をそっと握ってくれた。
息が詰まる中、去っていく監督の背中を必死で目で追いかけた。
出た。
ものすごく怖かった。
声の出し方がわからなくなって。
あれ、出し方…どうやったっけ。
これが番組中になったらどうしよう。
さっきの恐怖は二度とごめんだ。
でも、本当に指1本動かなかった。
勝手に体に力が入って、呼吸も上がっていく。
子供のように泣きじゃくって、ユノヒョンにきついほど抱きしめられた。
ただ、今はひたすらに怖かった。
極度の緊張が産んだ、あの状態。
この後は気をつけていたからか、そんなことは無かったけれど、もう少し人と接していけたらと思った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。