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第6話

ミルクティー
「みこ〜久しぶり〜!」

「うわわ、抱きついてくるな」

「だってみこからご飯食べに行こうなんて言ってくれたのが嬉しくて〜!」

「はいはい、久しぶり」

「みこ〜!」

「とりあえず店入るよ」

中学の時の同級生、杠葉公佳と久しぶりにご飯を食べに来た

ご飯を食べに来た、というかご飯を食べながら話をするために来た、の方が正しいか

LINEではよくやりとりしてたけど実際会うのは1年ぶりくらい

私はミルクティーを、公佳はジュースを頼んだ

さてと、と公佳がこっちに顔を向ける

「みこは水泳どう?推薦狙えそ?」

気まずい。最初から暗い話題になっちゃう

「……実は、なんだけどさ」

「?」

私は苦笑いを作る

「事故にあっちゃって泳げないんだ…はは」

「は!マジっ!?」

「え、うん」

「事故って、車に引かれた、とか!?」

「まぁ、そんな感じ…」

「車運転してた奴絶対許さん!!地獄の底までまで呪うっ!」

まさか、そう来たか

そういえば、公佳はいつもこうだった

被害者の私の心配をするよりも先に加害者の相手に怒る

だからか。公佳と居るのがこんなに心地よいのは

この子に死のうとしたって言ったらどんな反応をするだろう

まぁ、そんなの終わった話だけど

「で、公佳はどう?なんか変わった事あった?」

「う〜ん相変わらずかな」

「そっか」

「みこの話に戻るんだけどさ」

「泳げなくなったってことは大会もでれない…?」

「うん。まぁ」

「そっか」

しょんぼりとした顔をする

「でも、大会は来てね」

そう、今日の目的はもうひとつ

織姫と彦星を引き合せること

「え?でもみこ出れないんでしょ?」

「うん。でも暁人は出るから」

「暁人は、いいよ」

若草暁人。私と公佳と同じ中学だった友達

暁人と公佳は付き合ってた

だけど、色々あって別れることになって、高校も別々に

2人が会うのは1年に1度

水泳の県大会の日

暁人も私も水泳部のレギュラー

そして高校最後の大会

大会に公佳が来なければ2人が会うことはもう無いかもしれない

他人からしたら3年も経ってるんだ、と思われるだろう

でも、私は知ってる

2人が3年前からずっとお揃いのミサンガをつけてることを

流石に取り外したら修復したりはしてるかもしれないけど、けど、

本当に、何も気持ちがないなら普段からつけるはずはない

好きな人ができればつけるわけない

いつも暁人が部活でつけてるのを見てた

そして今日、公佳は右腕につけている

1年前に会った日も同じミサンガをつけてた

つまり、そういうこと

そういうことだと願いたい……

それに、これは私がやり残したこと

本人達よりも私の方が後悔しそう

だから、私の勝手だけどしなきゃな

「公佳は、暁人には会いたくない?」

「会いたくないって訳じゃないけど…」

「どうせその日開けてるんでしょ?」

「う、うん」

「じゃあ来てよ」

「だけど、あっちは迷惑かもしんないし」

「迷惑じゃないと思うよ」

「でも、」

「暁人、変わってないよ」

「……」

「あの頃から何も変わってない」

「……」

「中身も見た目も、きっと気持ちも」

「…………苦いの」

「……?」

「暁人のこと、思い出す度にさ、口の中が苦くなるの」

「苦く、なる……」

「私ってダメだなって思ったとき、いつもそうなるの」

「じゃあ暁人とのこと…」

「全部私のせいだって、後悔して苦くなる」

「そっか」

本人にとっては簡単なことじゃないらしい

でも、それが苦い思い出でも、忘れられない大切な思い出でもある

だから私が引く訳にもいかない

「その思い出、苦いままでいいの?」

「……え?」

「そりゃ辛くて、苦しくて、悲しい思い出だと思う」

「だけどさ、そのままにしとくのは違うよ」

「苦いなら甘くしようよ」

「甘く……」

「辛い思い出、幸せな思い出にしようよ」

「しあわせ……」

「苦くなるとかそういうのよくわかんないけどさ、やらずに後悔するより、やってから後悔しようよ」

「付き合ってって言ってるわけじゃない、ギクシャクしたまま終わってほしくないの」

「……………」

ミルクティーとジュースが届く

ぽとぽとぽと

角砂糖とミルクを落とす

公佳はストローでジュースをかき混ぜてる



「…………行ってみる」

「ほんと!?」

「うん、久しぶりに話したい。“友達“として」

「ぁ……」

言葉の重みを感じた

公佳が悲しそうな笑顔を作っている

私は、こんな表情を見せられて何と言えばいい?

今更になって私は本当に正しかったのか思い始めた

公佳の目は遠い遠いどこかを見ているように見えた

その後他愛もない話をして夕方には別れた

駅から家まで歩いてる途中、喉が渇いて、自販機でまたミルクティーを買った

いつも甘く感じるけれど、今日は少し、苦く感じた