今日もいつものように、女装をして夜の街にくり出し、ナンパしてくる男を引っ掛けようとしていた。
ホテル街に向かって歩いている、ちょうどその時
女1「えぇ〜やば!ちょーウケるんですけどw」
女2「それな。でもこれマジだからw」
正面の方からこちらに向かってくる女2人組は、クラスメイトの女子だった。
中也(やべェ、もしもこの格好で俺だってバレたら...!!)
中也はどうにかしてやり過ごさなければ、と思い急いで近くにあった路地裏に駆け込んで、その場から逃げ去った、が
ボスンッ
路地裏に逃げ込んだ先で何かに体当たりした。
中也(なんだァ!?もしかして行き止まりだったか!?)
と焦ったが、中也がぶつかったのはなんと ─────
太宰治だったのだ。
中也「───っ!?」
中也(なんでこんな所に青鯖が居やがる!?引越したんじゃなかったのか...?いや、今はそんな事はどうだっていい!此奴にバレるのが1番最悪だってのに!)
出会い頭に太宰と遭遇したことに驚いたが、声には出さずとっさに思ったことに自問自答し、そして頭の中で考えられる最悪なケースを、既に想定していた。
はずなのに、太宰が発した言葉は中也をさらに驚かせた。
太宰「わぁっ!なんて美しいお嬢さんなんだ!是非私と心中してくれないかい?」
あまりの出来事に頭がついていかない。
中也は、はァ?という言葉を飲み込み、口だけをポカンと開けたまま、目を見開いて太宰を凝視した。
何言ってやがんだ?此奴。もしかして、俺だってことに気づいてねェのか??
そう思っていれば、太宰さらに付け加えて
太宰「だがその前に、私と共に素敵で熱い夜を過ごしてから心中するのはいかがかな?」
と夜の誘いをしてきたのだ。
相変わらず手が早ェ野郎だ。
"心中してくれる美女探し"もまだ続けてやがったか。
だが、出会ったばかりの女(のフリをしている中也)に情事を迫るのは、そこら辺にいるオッサン共と変わんねェ。
此奴もたいがい糞野郎だ。
と思うことも多々あったが、これは逆に好都合だと思った。
中也「高くつくけど?」
またいつものように、相手がシャワーを浴びている隙にお金だけ取って逃げればいいのだ。
そうと決まっていれば、
持っていれば全額むしり取ってやるし、持っていなくても逃げてしまえば、太宰のプライドを傷つけことが出来る。
お金はどちらにせよ、逃げてしまえばなんの問題もない。
そう考えていた中也の考えは甘かったのだ。
しかし、この時点では中也はその事を知る由もない。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。