ベキッ
……………………俺、莉犬は最近
友達が怖くなってきた
きっかけは……俺が物を失くしたとき
まぁここまでは良いだろう
問題はこの後だ
結局、さがせるとこは手当り次第さがしたが
俺のペンが見つかることはなかった
元々変なとこで几帳面なため、ああいうのは最後まで使いたかったなぁ……
と、落ち込んでいた
ふとそう思い、友達の方へと顔を向けると
……………………アイツらは、俺を見てヘラヘラしていた
しかも探してもいない
「探す」
そう言っていたのにも関わらず
口先だけだった
自分の声音を聞いて、分かりやすく落ち込んでんなと自嘲する
……………………でも、アイツらは
俺に見向きもしなかった
……………………俺としては
せめて…………せめて
強欲かもしれないが
そう思いながら、授業をうけたのだった
授業も終わり、皆が思い思いに動く中
俺は一人の友達に用があった
実は俺はこの子と交換ノートをしている
お互いに思い思いのことを書ける交換ノート
俺はそれが大好きで
ついこの間、この子に「かまってちゃんなのかもしれない……」
と書いたのだった
だが……………………それを今言うのは、おかしい気がする
返しそびれたのは俺が悪い
だがそれだけで……秘密を皆にぶちまけるのは……
都合がよすぎる
俺はとにかく笑って済ませたが
心の内は穏やかではなかった
俺は交換ノートを読んでため息をついた
内容が「愚痴」だったからだ
あの子は大抵……愚痴しか書かない
いや別に無理に「書くな!」とは言わないが
これに愚痴を書くのはおかしい気がする
愚痴を言えるぐらい俺に信頼を寄せているのだろうか
だとしたら……………………俺は?
俺はあの子の気にさわるだけで秘密をぶちまかれるのだろうか
俺はあの子を信頼してたからこそ書いたのに
……………………友達って、そんなものなのか
今更気づいた
あぁ………………そうか
友達ってのは平面上で
実際は………………
都合のよい、なんでも聞いてくれる機械=ロボットのようなものなのか
バカだなぁ……………………俺
こんな薄っぺらいものを信頼して
皆からしたら……
俺は……………………俺はただの
なんでも聞いてくれる機械のような存在か
初めて気づいた、残酷な関係
俺はずっと涙が止まらなかった
………………悔し涙なのか
はたまた怒りなのか
分からなかったけど
ひとしきり泣いたあと
コンコン
俺の泣き声が聞こえてたのだろうか
なな兄が部屋に入ってきた
俺はなな兄に全てを話した
そして最後に
なな兄は一言も喋らず真剣に聞いてくれた
そして少し考える素振りを見せたあと、
俺にこう言った
……………………そっか、そうだよな
俺には大事な家族がいる
友達がいなくたって、可愛くて優しい「家族」がいるんだから
………………………俺は、俺なりの生き方をしよう
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。