ジェル君に連れられて来たのは、墓地霊園だった
なんでこんなとこに………………?
父さんと母さんのお墓はここにはないはずだし
ジェル君が指さしたのは、とあるお墓だった
黄色いガーベラがお供えされていて、
読みにくいけど………………名前は
「黄綽 緋衣」
と、書かれている
少し羨ましかった
よくよく考えてみれば、そうだろうなと納得する
だってここは墓地霊園だし
………………………………でも………………
この、黄綽緋衣という子とは面識がない
ましてや、初耳だ
………………病気………………………………………………………………?
僕はジェル君の話を黙って聞いていた
………………聞かないと、ダメな気がしたから
そう、言うのがやっとだった
僕がいつも見ていたジェル君は、笑顔で、明るくて、
皆を笑顔にしてくれる………………
そんな凄い子だったのに
心の奥では、苦しかったんだ………………………………
ずっと悲しそうだったジェル君が、急に僕の方を向いてきた
………………そして、抱きついてきた
今まで見えてなかった、ジェル君の胸の内
それが急に目の前で見えてしまって
思わず泣いてしまった
なんだか胸のモヤモヤが、すっと消えていく感じがした
それがなんだか不思議で、またわっと泣いてしまった
………………その後、二人で泣きながら帰って
皆に驚かれたのは、また別の話
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!