第40話

とある日③
1,616
2019/12/06 20:28
[としみつ視点]

あなたちゃんが出張に出て2日目。

なんとなく恋しくて合鍵であなたちゃんの部屋に入った。いつも通りの整頓された部屋とあなたちゃんが使う芳香剤の匂い。

いつのまにか自分の部屋よりもあなたちゃんの部屋の方が落ち着くようになってた。

ソファに寝転がってYouTubeを見ているとガチャガチャと玄関から音がなった。

あなたちゃん?もう帰ってきた?
…緊張で耐えられなくなったとか?

そう思ってリビングの扉を開けると、




…誰?いやまじで誰?本当誰?



見知らぬババァが目を見開いてこちらを見ている。


???「あなた、誰なの?」

としみつ「いや、え?そちらこそ。」

???「ここは私の孫の家ですが?」


…??????????????????

え、おばあちゃん?あなたちゃんの?

いや、え?そちらこそ。とか言っちゃったよ。

とりあえず中に入ってもらった。


としみつ「え…。ごめんなさい、僕はあなたちゃんとお付き合いしている者でして…。」

祖母「…孫と付き合ってるのは知らなかったけど、貴方は知ってるわよ。あなた方有名人だものね。」

としみつ「ありがとうございます…。」

祖母「今日あなたは?」

としみつ「出張で東京みたいです。」

祖母「まったくもう、なにも言ってかないんだから。」

としみつ「言ってないんですか?」

祖母「毎週木曜の朝に来るのに来れないって言うからまた無理して仕事してるんじゃないかと思って来たの。そしたら彼氏いるし出張行ってるし…。誰に似たのかしら…。」

あなたちゃんからおばあちゃんの話は聞いている。

とても元気で元気すぎて家族が心配して岡崎で暮らしたら?と言われたと。

だから元々岡崎の滞在は2年ほどの短期間の予定だったらしい。

心配性なとことか、そういう元気なところとか、多分あなたちゃんはおばあちゃん似なんだな、と思った。

そして毎週水曜の夜は楽しそうにしているのはおばあちゃんに会いに行ってたからなのか。




としみつ「毎週水曜に楽しそうにしてたのはおばあちゃんに会いたかったからなんですね。」


そういうとパアッと顔が明るくなって孫自慢が始まった。

そうなの、本当に昔から私の事が好きで〜

ママの次にばあたんって言ったのよ?

あの子は仕事もできてご飯も私が教えたから〜

顔も目は私に似たと思うの!

あ、でもね、指が細くて長いのはおじいちゃん似ね。優しい所も。


そういうと、あなたちゃんが寂しい時と同じ顔をした。


としみつ「その大きい袋なんですか?」

祖母「あ、たまには私がご飯作ってあげようと思ってね。」

としみつ「…じゃあ僕に作ってくださいよ。手伝うので。」


そういうとまたあなたちゃんと同じように嬉しいのを隠すような笑い方をした。

まったくもう…。と言いたげな素振りに普段なら少しムカつく所だったけど、あまりにあなたちゃんとそっくりで笑ってしまった。


そして初対面のババァと喧嘩しながら作ったご飯は美味かった。

じゃがいもを剥けば、そんな厚く切ったら実なくなるよ!

にんじんが小さすぎると、圧力鍋でやるから溶けてなくなるよ!


いや本当口うるさいババァだな。

と、思ったのは秘密だ。

でもやっぱりどこかあなたちゃんに似ていて憎めない。

怒りながらも楽しそうに嬉しそうにする姿を見るのは嫌ではなかった。


2人で食べていると、

祖母「あなた、料理心配だったのにやろうと思えばできるじゃない。」

としみつ「心配?なんで?」

祖母「だって、あなた方とっても料理下手じゃない?りょうくんは上手みたいだけれど。」




え、待って、詳しくない?





としみつ「なんで知ってるん?」

祖母「あら、言わなかった?私YouTubeとっても好きなの。」

生意気なババァだが見た目は優しそうなご婦人って感じだから絶対知らないと思ったらめちゃくちゃ見てるやつかもしれん。

そう思っていると、

祖母「ほら見て、しばゆー君と写真撮ったことあるの。」

そこにはババァとしばゆーがめちゃくちゃ笑顔のツーショットが写っていた。


としみつ「いや。もうファンやん。」

祖母「そうなの、だからびっくりしたわ。」


ファンだと知った後も喧嘩しながら皿を洗ったり話したりした。

としみつ「いや。もうババァは黙って?笑」

祖母「誰がババァよ、お姉さんって呼びなさい。男してのマナーよ??それに私がババァならあなたはクソガキよ。」

そんなやりとりをしてなぜか仲良くなった。

そして夕方くらいになってババァが帰ると言った。

祖母「それじゃあね。」

としみつ「ババァ、明日あなたちゃん夜いると思うし来たら?俺もいるし。」

そういうと嬉しそうな顔をして、

祖母「じゃあまた明日。あとお姉さん、ね。」

と言って帰っていった。


少しだけ、明日が楽しみになった。

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