第43話

虫さんからのお願い②
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2019/12/08 18:04
[としみつ視点]

今日はあなたちゃんと動画に出れる日だ。

だから朝も一緒に起きて朝ごはん食べて服選びあって家を出た。

可愛い彼女を自慢出来てほぼ1日一緒に居られる。

普段うざったい朝もあなたちゃんが一緒ってだけで幸せだ。

でもあなたちゃんはいつもと少し違くてぼーっとしていた。


としみつ「緊張してるん?」

あなた「んーん、朝ごはん食べ過ぎたかなぁ。」

としみつ「具合悪い?」

あなた「具合はいいよ、大丈夫。」


ぼーっとしたまま答えた。

なんとなく心配でコンビニで栄養ドリンクを買って一緒に飲んだ。


あなた「つーくんは優しいなぁ。つーくんが彼氏で良かった。」


普段こんなこと言わないからドキッとした。


俺らと増田以外揃っててあなたちゃんはゆめまるの彼女に綺麗ですねってニコニコして話しかけてた。

いつもと様子が違うのを心配してたけど体調が悪い感じじゃなくて良かった。


そこに増田カップルが来た。


増田「あ…。」

少し沈黙が続いた。

てつや「え?なに?」

増田「いやなんでもない。」



あなたちゃんは下を向いてスマホをいじっていた。



てつや「なんでみんな喋らんの?」

虫眼鏡「いいやん別に、そういえば3人とも何作るの?」

しばゆー「いやなんかあるやん。笑」

としみつ「なんか?なんかあんの?」

りょう「増田も増田の彼女もいつまで立ってんの、座りなって。笑」


なんかおかしいなぁって思ってると、


てつや「なんか変だった?全然喋らんやん。」

増田「いや、としみつの彼女?」

としみつ「そうだけど?」

増田「いや、元カノだなって。」









は?

いや、そんなわけがない。

だってあの日初めてで、あなたちゃんはキスすらしたことなくて、手を繋ぐだけで嬉しそうにするような子なのに。

それに、それに。



横を見ると、何も喋らないあなたちゃんがいた。





としみつ「あなた、本当?」

あなた「……。」

増田「いや、本当だって。結構長く付き合ってたし。虫さん知ってたじゃん。」

虫眼鏡「…まぁ。」



気まずい沈黙が流れた。

俺も何も言えなかった。

過去なんて知らんって、言いたかったけど、

好きになり過ぎてた。

俺のだって、信じ過ぎてた。

俺に向けられた笑顔とか、少し怒った時の顔とか、嬉しいと泣いちゃうところとか、悲しいときは強がるところとか、

全部俺しか知らないと思ってた。





としみつ「死ね。」





長い沈黙の末出た言葉はこれだけだった。

誰に対してとかじゃなくて、ただ今の気持ちを表す言葉が見つからなかった。

今はもうため息しか出ない。




としみつ「今日、帰るわ。あなた帰ろう。今日の飯の材料買わなきゃ。」



シンとした空間に小さくなってたあなたちゃんが俺の顔を見てポロポロと涙を流してた。



黙ってたことに対しての罪悪感なのか、

もしかしてまだ増田のことが好きなのか?

増田の彼女を見て泣いたとか?



ポロポロと涙を流したかと思うと、あなたちゃんはしゃくり上げて泣いた。



ただ頭を撫でた。


としみつ「帰ろ。化粧崩れちゃったもんな。」






虫眼鏡「ごめん!としみつ!」

増田「いや、としみつがガチすぎてセリフ飛んだ。」

増田の一言で、あなたちゃん以外のみんなが笑った。




セリフ……?




あなた「つーくん、好き。」

としみつ「え?なにこれ。」

増田「彼女出来たのはドッキリってドッキリの仕返しドッキリ!」

としみつ「……嘘?」

増田「ごめん嘘。本当ごめん。」

としみつ「え、じゃあなんであなたはこんな泣いてるん?どうした。」

あなた「だって、死ねとか今日は帰るって言ったとき、すごい冷たい言い方なのに、あなたに話しかける時だけ優しい声出すから、ごめんねって思ったら泣いた、」

しゃくりあげながら説明するあなたちゃんは親に怒られた幼児みたいだった。

安堵と脱力感で死にそうだ。

てつや「てか、としみつ、つーくんて呼ばれてんの?」

真面目な顔で聞くてつやにまたみんなが笑った。

としみつ「いやそれは置いといて、ひどくない?俺の彼女罪悪感で泣いてんだよ?泣いてるとこも可愛いけどさぁ。」

ゆめまる「としみつめっちゃ怖かった。」

増田「殺されるかと思ったもんね。」

虫眼鏡「当初は彼女出来てないドッキリのはずだったんだけど、それはあなたちゃんが嫌だって言ったからこうなったんだよ。」

としみつ「あ、まって、虫さんの説明で全て許せそう。本当彼女が可愛すぎる。いや、あなた以外本当殺すとこだったけど。」

虫眼鏡「というかさぁ、本当はてつやがかけられるべきやつだからね、これ。笑」

てつや「いやだって彼女出来んやん。笑」

しばゆー「…一個言っていい?」

りょう「どうした、しばゆー。笑」

しばゆー「なんで俺も何も聞いてないの?笑」


まさかのしばゆーもドッキリされる側だった。


虫眼鏡「だってしばゆー仕掛け人はバレるやん。」

しばゆー「これはただの仲間はずれやん!俺も仕掛けたい!」

てつや「てことでまた次週の動画でお会いしましょう!バイバイ!」

としみつ「え?これ動画?」

虫眼鏡「料理対決はしません!」

としみつ「いやふざけんな増田。」

まだめそめそしてるあなたちゃんを抱きしめてそう言ってやった。

増田「つーくん、怒らないで。」

としみつ「いや絶対復讐するからな。」

ここで動画は終わった。







依然めそめそするあなたちゃん。

可愛い。

としみつ「悪い大人に騙されてかわいそうに。」

りょう「がんばったね!」

あなた「セリフ言えなかったぁ…………。」

としみつ「セリフあったん?」

あなた「うん。今もまっすーのこと好きって言うはずだった。」

としみつ「それは俺泣くよ?普通に。」

虫眼鏡「それは、てつやが考えたから!」

としみつ「お前にも復讐するからな!」

てつや「いいやん、あなたちゃんがこれだけとしみつのこと好きって分かったんだから。笑」



いやまぁ、確かに。

俺に嘘つけないんだなってことは分かったよ。






しばらくはきっと素直にハグしてくれるんだろうなぁ。

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