・一歌視点・
世界はいつも通りだった。
一つだって違うところはない。
ただいつも通りの日常だ。
私たちの日常がかえってきた。
ガラリとクラスの戸を開けると、左端の席から咲希が「あ!」と声を上げた。
そして咲希の傍には…
桐谷さんもいた。
私にヒラヒラと手を振ってくるのに対して私も手を振り返した。
珍しいメンバーだとも思いながら二人の元へ行く。
そんなことを言いながら慌てて机の中を漁る咲希。
桐谷さんは口元を隠して穏やかに笑った。
ドキ とその言葉が胸を打つ。
きっとそれは心当たりがあったからだろう。
あの人狼ゲームについて。
咲希は私と桐谷さんの顔を見比べて不安そうな顔をする。
私と桐谷さんは顔を見合せてそう笑った。
咲希は改まった表情で頬に手を当てた。
夢というのは、きっと──
その言葉に、私─そして桐谷さんが反応したのがわかった。
ピクリと体が動いた。
人狼ゲーム…
私たちはやはり本当にやったのだ。
さっきまで夢かとも疑っていたが、結果的に夢じゃない。
ここにいる三人は確かにゲームを覚えているのだから。
ポツリと桐谷さんが口を開く。
咲希がそれに反応して身を乗り出す。
私も便乗して呟いた。
咲希は落ち着いたような、怯えたような表情をして呟いた。
みんなの笑顔が消えていく。
その言葉がまた胸を打つ。
そうだ、確かに言っていた。
あのミクは私たちをいつゲームのセカイに連れ込むかわからない。
油断禁物なのだ。
桐谷さんがそういうのに対して咲希は「そっか」と肩を落とす。
元気づけるためにそういってみるが、二人とも俯いたままだ。
私は胸に手を当てて口を開いた。
二人は不思議そうな顔で私を見つめた。
安心させるように笑顔を浮かべて話す。
桐谷さんはやがて笑顔を取り戻して頷いた。
もうミクからのゲームの誘いが来ないのが、一番いい…が、
またこの不幸は訪れるだろう。
私たちは顔を見合せて笑った。
そんな中、スクールバッグの中のスマホがピカりと光った。
ミクはニタリと笑う。
まるでイタズラを考える子供みたいに。
あとがき

















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。