あれから半年
__朝日side__
今日は中也とは別任務らしい。
私が任されるのは大概「暗殺」
まあ、罪悪感はあるけど、これも…「彼奴等」に復讐をするためだと思えばいい。
私の異能力、雪化粧は一定時間のみ姿を消す、もしくは短時間のみ時間を止める、という異能力。
今までも、時間を止めて財布くすねて生き続けてきた。全うな生き方など、私には出来ないのだろう。
殺せた、筈だった。
「こ、の………………野郎ッッ!!!」
………異能力者だ。
私の後頭部に、何かの衝撃が走る。
点灯する視界の中、後頭部に当てた手は、真っ赤に染まっていた。
嗚呼、そうか…テレキネシス……とか云うやつだっけな、多分それだな…。
最後の力だったのか、異能力の男は死んだ。
其れより、自分の心配だ……、思ったより出血量が多い
まだ、姉さんの仇討ちも……いや、そうじゃない、中也と約束したんだ…
絶対に、あの約束は、忘れ…………た、く、な………。
ドサッ
__中原side__
ガラッ
朝日が、任務で深傷を負ったと聞いた瞬間、俺は倒れそうになった。
扉を開けると、其処には包帯を巻いた、自分が愛してやまない朝日が其処に居た。
走ってきて、息づかいが荒い。
でも今はそんな事はどうでも良かった。
………その時返ってきた返答は、誰も予想する事が出来なかっただろう。
威嚇するような目、俺に対する警戒心。
誰かが説明しなくとも、理解せざるを得ない。
朝日が、記憶喪失になった
樋口が説明を終えると、成る程、と云うかのように頷き始めた。
……手前は、相変わらず呑気なもんだな。
嗚呼、性格も喋り方も変わん無ェ
其処に居るのは、紛れもなく朝日だ
その潔癖症も変わんねぇンだなァ
その言葉を聞いていたのか、朝日は顔を至近距離に近づけてくる。
………言葉の真偽なんざどうでもいいんだよ
なんでこうなっちまったんだ
俺が一緒に居てやればこうならなかったのか?
…そんなの、残酷過ぎンだろ
__朝日side__
何だか懐かしく感じる。
きっと、記憶の無いあたしにとって唯一残った感覚なのやも知れない。
…此奴、来た時と比べて口数がすく無ェな。
来た時は元気な奴だと思ったが、見当違いか。
あたしは必ず帰ってきた時に風呂に入る。
潔癖症だからじゃない、他の理由で、だ。
そう云ってくしゃりとあたしの頭を撫でた。その手は大きく、初めてな筈なのに、何処か懐かしかった
風呂上がり、私はいつもキャミソールで出ていく。
今まで居候してきた所でもだ。其処が例え男所帯でも、襲われる程柔な女では無い事は自他認めていた為、口煩い奴も居たり…
って、あれ?居候って、何時、何処でしてたんだっけ?…あぁもう、記憶喪失とか最悪じゃねぇか…
あれ?この体を見て、なんとも思わない?…あぁ、見慣れているのか。
幾ら自分に記憶が無くたって、此処にいるのは前から居たあたしなのか…、複雑だ。
同居していたのならベッドくらいある筈だが…その面影も無ェな、明らか一人のまんまって感じしかし無ェし。
それは最初、皮肉に聞こえて言い返そうとした。
しかし、その表情で怒りなど消え失せてしまった。
……………凄く、切ないそうな顔をしていた。
記憶があったなら、こんな事は口走ったりしない。それが普通なのだ。
そんな声で言われても、説得力無ェよ。
一体、此奴は何を考えてんだ?
初めて、じゃないけど、実質初めてだ。此奴のベッドで寝るのは。
…やっぱり、何処か寂しい感じがする。
暖かな布団が冷たい感覚。
今まで………今までって、何だった?
───────もう、何もかも、忘れてしまった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。