第5話

木漏れ日【じんたん】
401
2018/03/06 12:51
テオくんが森の奥深くの茂みをかき分けた。






そこには────










木漏れ日の指したちょっとした場所。


小さい花が所々に咲いていて、
近くには小川が流れている。


こんな綺麗な場所は見たことがない。

じんたん
………わぁ

俺はそれしか言葉が出なかった。


感激しかない。

俺はこれまで生きてきたのにこんな場所も知らなかったなんて。

テオくん
じんたん、気に入ってくれた?
じんたん
気に入るも何も、最高だよっ!
テオくん
じんたん好きそうだなって思ってさ
テオくんはそう言って照れくさく笑う。


顔が少し赤い。

テオくん
ちょっと休憩する?
じんたん
うん、したい
俺とテオくんは並んで座って太陽の日を浴びていた。


久しぶりだな〜、

こんな気持ちいい気分。




ちゅん

ちゅん



じんたん
わ、鳥さん
近付こうとすると鳥は逃げてしまった。
テオくん
鳥さんってw
じんたん
え?
テオくん
いや、子供っぽいな〜って
じんたん
そお、かな?
テオくん
うん

とたんに恥ずかしくなった。


今までずっと鳥さんとかうさぎさんとか、

何でもかんでも『さん』つけて言ってたよ!!


なんでみんな言わなかったの?
じんたん
……///
顔が赤くなるのがわかって俺は顔を隠した。


いや、背けたのか。



その瞬間、見えてしまった。



ちょっとした茂みの向こうになにかある。

暗くてよく見えない。
じんたん
………なに、あれ
テオくん
じんたん?
じんたん
……………
俺はテオくんの言葉を無視してそのある"もの"がある場所へ向かった。
テオくん
じんたん!?ま、まって!

テオくんに手を掴まれた。


でも俺は振り払って走った。





そこにあったのは────








じんたん
なに、これ………
石があった。


周りには花と果物がある。



お墓だろうか。



でも誰の?
じんたん
……あっ

俺は見てはいけないものを見てしまった。




じんたん
し、し、ししし、した、い?
お墓の後ろ側にあったのは死体だった。
じんたん
テ、テオくん!!ここ、ここっ、誰か死んでるのっ!!

俺は振り返ってテオくんに言った。



テオくんの目は暗かった。
じんたん
テ、テオ、くん??
テオくん
……じんたん、待ってって言ったのに……
テオくんの目は泣いていた。


決して大粒だったり声が震えてはなかった。


でも涙は確実に出ていた。
じんたん
テオくん、どういうこと、なの?
恐る恐る俺は聞いた。


テオくんは小川の方に目を向けた。



必然的に俺から目を背けた。




そしてテオくんは言った。






テオくん
聞いても、離れてかない?
じんたん
うん、離れない

テオくんは俺に背中を向けたまま言った。





俺は心の中で呟いた。














離れるわけないじゃん。

プリ小説オーディオドラマ