テオくんが森の奥深くの茂みをかき分けた。
そこには────
木漏れ日の指したちょっとした場所。
小さい花が所々に咲いていて、
近くには小川が流れている。
こんな綺麗な場所は見たことがない。
俺はそれしか言葉が出なかった。
感激しかない。
俺はこれまで生きてきたのにこんな場所も知らなかったなんて。
テオくんはそう言って照れくさく笑う。
顔が少し赤い。
俺とテオくんは並んで座って太陽の日を浴びていた。
久しぶりだな〜、
こんな気持ちいい気分。
ちゅん
ちゅん
近付こうとすると鳥は逃げてしまった。
とたんに恥ずかしくなった。
今までずっと鳥さんとかうさぎさんとか、
何でもかんでも『さん』つけて言ってたよ!!
なんでみんな言わなかったの?
顔が赤くなるのがわかって俺は顔を隠した。
いや、背けたのか。
その瞬間、見えてしまった。
ちょっとした茂みの向こうになにかある。
暗くてよく見えない。
俺はテオくんの言葉を無視してそのある"もの"がある場所へ向かった。
テオくんに手を掴まれた。
でも俺は振り払って走った。
そこにあったのは────
石があった。
周りには花と果物がある。
お墓だろうか。
でも誰の?
俺は見てはいけないものを見てしまった。
お墓の後ろ側にあったのは死体だった。
俺は振り返ってテオくんに言った。
テオくんの目は暗かった。
テオくんの目は泣いていた。
決して大粒だったり声が震えてはなかった。
でも涙は確実に出ていた。
恐る恐る俺は聞いた。
テオくんは小川の方に目を向けた。
必然的に俺から目を背けた。
そしてテオくんは言った。
テオくんは俺に背中を向けたまま言った。
俺は心の中で呟いた。
離れるわけないじゃん。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。