俺は昔、昔っても小さい頃だけど。
その時に俺は街の男の子にいじめられた。
いや、いじめられてたか。
毎日のように『女みてぇ』とか『泣き虫』とかって、
この顔のせいでそう言われた。
そんな生活が嫌だった。
ごっ
ごっ
ごっ
俺は自分の顔を殴り続けた。
この顔のせいで自分の人生がいつか狂ってしまう。
ひたすら殴り続けた。
でも、いざ殴った後の顔を見たら、
あんまりにも醜くて。
残酷で
汚かった。
もっと嫌いになった。
でも勇気がなくて死ねなくて。
だから赤ずきんをかぶった。
最初は自分の顔を隠すために、
赤ずきんを深く、深くかぶった。
あざもなくなって顔が元に戻ってしまった。
あざだらけの顔の時よりはいいけど、
やっぱり好きになれない。
それから赤ずきんをかぶるようにした。
そっからだんだん自分に自信がついてきて、
でも赤ずきんは手放せなかった。
そんな弱かった自分だった。
俺は俯きながら話した。
だからテオくんの顔は見れなかった。
涙が出てきた。
テオくんが大声をあげたからびっくりした。
俺は顔を上げ、テオくんの顔を見た。
こんな真剣な顔をしたテオくんは初めて見た。
テオくんはきっぱり言い切った。
すごく説得力のある言い方だ。
俺はそんなテオくんを見て『すごく綺麗だ』と思った。
何も裏がない。
まっすぐな瞳。
透き通った心。
教科書のお手本みたいな人物だ。
俺は、
テオくんが好きだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。