変な転校生に絡まれたせいで光汰を待たせてしまった。早く行かなくては。
そうだ、光汰は何かと過保護なんだ。こういうことは言わなければ良かった。
いつも通り、継ぎ接ぎだらけのコンクリートを歩いている。曲がり角に着くと、光汰が家と反対方向に行こうとした。
私が間違っているのか?少し疑問を抱いてしまう。光汰が間違えることなんて滅多に無い。皆既日食が起こる周期くらいに珍しいことだ。
光汰が誘ってくれた。これは金環日食の周期くらいに珍しいことだ。
行かないという選択肢は元より無い。
お洒落な外観の店のまえに立つ。水色と茶色のストライプ柄が可愛い。今時よく言う、"インスタ映え"というものか。
そう。ここはチェーン店という訳では無く、あくまで個人で経営しているというのだ。というのも、ここに来るまでに光汰から聞いたのだが。
店内も小洒落た雰囲気が漂っている。聞き覚えのある、最近の恋愛ソングが控えめに流れている。
実は光汰、類を見ない甘党なのだ。他の人には隠しているらしい。
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鮮やかな色のパフェが届いた。
光汰は、実はただの甘党という訳では無く、お菓子作りも得意なのだ。だからパフェとかもたまに作ってくれる。店にも負けず劣らずの出来だと思うが。
だろうなとは思った。さっきも言ったように、光汰から誘って来るのは本当に稀なのだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!