一瞬目を見開いた与謝野先生が、静かに言う。
敦くんと共に探偵社に帰り、速攻で私は“言わなきゃならないこと”を伝えた。
敦くんが声を荒らげる。太宰さんは、想定していたかのように沈黙を貫く。
険しい顔で、ナオミちゃんが止める。
でも、もう決めた事だ。
人助けは──私には、向かない。
やっとこさ、という感じで国木田さんが言葉を零す。
何だかその反応が、一番胸に来る。
涙腺が刺激されるけれど、何とか堪えた。
大丈夫だって事を、証明している最中なんだから。
思えば色々な事があった。
とても楽しかった。
──こんなに佳い職場は、無かった。
悪運体質の為に、いつでも追い出されても佳いように。辞表は、常に携帯している。
其れを、そっと、机の上に置く。
──人生の主人公は自分自身だ。
よく、そんな言葉を聞く。あれ、聞くよね?
まァ兎に角だ。確かにそれは一理ある。
主観というものは、固定概念として根付き、
片時も離れることは無い。
ただ、視点をクルリと変えてみたらどうだろうか。
この街、この世界、この世、全てが物語だったら…?
その物語に自分は登場できるのだろうか。
私は………
国木田さんのぽかんとしたような声。
そっと目を伏せた太宰さん。
普段は閉ざされた乱歩さんの瞳の開化。
悲痛に呻き声をあげる敦くん。
慌てたような谷崎さんに、
口元に手を当てるナオミちゃん、
吃驚したのかフリーズする賢治くんに、
思案するように押し黙る与謝野先生。
あなた
武装探偵社 調査員
異能力「星ノ巡(ホシノメグリ)」
精神が不安定、もしくはマイナスだと悪運が、
精神が安定、もしくはプラスだと幸運が訪れる。
───本日を以て、私はメインを辞退します。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。