第9話

【9】
22,742
2017/08/25 15:35
息を切らして走り続ける。


私は、酷い悪運体質だ。


武装探偵社に入ってからは、
虎の威を借る狐みたいに過ごしてきた。

そのおかげもあってか、
前よりは随分と落ち着いたみたいなンだけど…



今日みたいに、悪夢とか胸騒ぎとか、
そういう…精神が安定しない時なンかは、酷いンだ。

次から次へと、普通なら一生に一度有るか無いか位の出来事に見舞われる。



バナナとか落ちてたら嫌だなァ…



私は普段よりも足元に注意し乍、全速力で駆けた。
それが、裏目に出たことは言うまでもないだろう。



本日二度目、人に衝突…は、何とか防いだ。
ギリギリで急停止した私が、慌てて目の前の人物を見上げると…
太宰治
太宰治
やァ、あなたちゃん、
こんな所に居たのかい
聞きなれた阿呆声。

恐怖やら焦りやらが色々許容量越していた私にとッて、探偵社員という名刺がついた人…

特に、調査員の人に会えた事はあまりにも幸運で。
あなた

太宰さん...

全身の力が抜けるみたいに、
私はその場に座り込んだ。
気が抜けていたのも束の間で。
太宰治
太宰治
あ、記憶は大丈夫なのかい?
太宰さんの言葉に私は背筋を伸ばした。
あなた

あれ、嘘です!

正直に私が答えると、
太宰さんは満面の笑みを浮かべた。
太宰治
太宰治
うん、知ってた
デスヨネ...
あなた

何かもう...咄嗟で演技を...あはは

太宰治
太宰治
いや、考え的には面白いと思うよ
あなた

そ、そうですかね!

太宰治
太宰治
実行するかどうかはさておき
あなた

.........うっ

太宰さんの目線が一瞬、私を舐め回すように移動して、見えた気がした。

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