何となく居心地が悪くなって、
私は苦笑いを浮かべる。
そう言えば、
この人とこンなに喋るのは初めてかもしれない。
確かに、事務員の方に言った事は
あるかもしれないけど…
聞いてた…の?
耳良過ぎない?
面白くないですよ?と付け加える
そンなもの聞いてどうするンだろう。
何か解決するとでも言うのだろうか…?
腑に落ちない気がしなくもないが、
何か考えがあるかもしれないなァ…
と、私は口を開いた。
生まれつき…かどうかはさておき、
物心付いた時から悪い事は立て続けに起こっていたこと、
連鎖して起こる不運は、
私の気持ちに比例しているようで怖かったということ、
年を重ねるにつれて、
事態は悪化していったということ、
何かの抑制になればと思い、
武装探偵社の事務職に就いたということ、
その威光のおかげか、
最近は余程の気の乱れがなければ
悪運に付き纏われることはなかったということ、
今日は奇妙な悪夢を見て、
落ち着けていなかったということ。
あらかた話し終えた私に、
太宰さんは興味深そうに聞いた。
太宰さんの言葉に導かれたように、絡まった糸が解けるように、
私は思い出した。
良いこと、ッて言うのは記憶に残りにくい。
だけど、良く考えて見れば…
確かに、太宰さんの言う通りだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!