第10話

【10】
22,207
2017/08/25 15:42
あなた

あの...太宰、さん?

何となく居心地が悪くなって、
私は苦笑いを浮かべる。

そう言えば、
この人とこンなに喋るのは初めてかもしれない。
太宰治
太宰治
あなたちゃん、
前に“悪運体質”だッて言ってたよね?
あなた

えっ、はい、まァ...?

確かに、事務員の方に言った事は
あるかもしれないけど…

聞いてた…の?
耳良過ぎない?
太宰治
太宰治
それ、詳しく教えてくれるかい?
あなた

構いませんけど...

面白くないですよ?と付け加える
そンなもの聞いてどうするンだろう。
何か解決するとでも言うのだろうか…?

腑に落ちない気がしなくもないが、
何か考えがあるかもしれないなァ…
と、私は口を開いた。
生まれつき…かどうかはさておき、
物心付いた時から悪い事は立て続けに起こっていたこと、



連鎖して起こる不運は、
私の気持ちに比例しているようで怖かったということ、



年を重ねるにつれて、
事態は悪化していったということ、



何かの抑制になればと思い、
武装探偵社の事務職に就いたということ、



その威光のおかげか、
最近は余程の気の乱れがなければ
悪運に付き纏われることはなかったということ、



今日は奇妙な悪夢を見て、
落ち着けていなかったということ。
太宰治
太宰治
それは悪運に限った話なのかい?
あなた

...はい?

あらかた話し終えた私に、
太宰さんは興味深そうに聞いた。
太宰治
太宰治
今の話だと、君の気持ちと周りの現象が関連しているようにも見える。つまり…そう、君が嬉しい気持ちになった時、何か良いことでも起きなかったかい?
あなた

.........あ......

太宰さんの言葉に導かれたように、絡まった糸が解けるように、
私は思い出した。


良いこと、ッて言うのは記憶に残りにくい。
だけど、良く考えて見れば…




確かに、太宰さんの言う通りだ。

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