陽も傾き、影がゆったりと伸びている。
子を探しているのか、鴉の声が寂しげに谺響する。
そして、私の声も、谺響する。
気が狂ったのか、と呆れ顔のそこの貴方。
違うんです、仕事なんです...!
調査員になってしまった訳だが、
実質、戦闘力0の私が何を出来る?
乱歩さんのような推理力も無ければ、
賢治くんのような純粋心も無い。
や、これは違うか。
まぁ、何にせよ、
調査員になったからには、仕事も変わるわけで...
私の仕事は、調査員の皆さんの現場について行って、ただひたすらに気持ちをプラス方面にすることだった。
......うん、自分で言うのもなんだけど
これって、所謂給料泥棒じゃ...?
眼前で、繰り広げられる熱い戦いを見ながら、
私は幾度となく考えた。
.........いや、熱い戦いというには少し一方的か。
少し微笑んで言った敦くんの声に、ふと我に返る。
彼も随分とこの探偵社に染まったようだ。
気絶した人が積み重なっているのをみて、改めて思う。
敦くんの了承を経て、頭の中に繰り広げられていた旬のスイーツカタログを閉じた。
大きく溜息をつく。
案外、妄想というのは疲れるものだ。
___笑って誤魔化す、という術は、無闇にやらない方がいいかも知れない。
それから数日、敦くんには変なものを見る目で見られた事をここに書そう。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。