あの事故はきっと、私の所為だ。
......私の気持ちに、反応したんだ。
また、だ。
私の所為で、また、人を傷付けた。
不幸だか異能だか不遇だかは知らない。でも。
周りの人まで、巻き込んでしまう。
私なんて...
背後からの声に、私の口から彼の名が零れた。
思わず、胸中に何かがぐっとくる。
抱き着きたくなる気持ちがむくむくと膨らむが、
流石に其れはマズイだろうと思い留めた。
よく見ると、国木田さんの衣服は型崩れしているし、彼自身も息は荒い。汗も滴っている。
無事、ですよ。
_______私は。
私以外の人が、私の所為で傷付いた。
それが、身体を廻って涙腺を刺激する。
何とか涙は我慢した。
そんな格好悪いとこ、国木田さんにだけは見せたくない。
あ、太宰さんも嫌だ。ネタにされる。
頑張って、笑顔を作って。
まだ、
何も聞かないで居てくれる国木田さんに感謝して。
そうだ、そうだよ。
何をうじうじうじうじ!
そんなの私じゃない。
私は、前を向いてこそなんぼ!
私、あなたは、後ろなんて向かないんだ!
国木田さんに思いっきりの笑顔を向けて。
私の所為だし!
実は中原さんガチおこしたらめっちゃ怖くて!
ビビっちゃって異能ズドンなので!
.........国木田さんは、一言
“俺はお前の母親じゃない”
とだけ言って、付いてきてくれた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。