第110話

お気に入り300名様突破記念
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2021/06/14 15:39
日常編

***
樋口一葉
樋口一葉
降水確率は零でしたが
あなた

こればっかりは神のみぞ知る、だねぇ

樋口一葉
樋口一葉
傘はお持ちですか?
あなた

持ってたら此処にいないと思うよ?

樋口一葉
樋口一葉
いえ、あなたは余計なことを考えて居座るでしょう?
まぁ、うん、確かに。雨宿りするひぐっちゃん見たら突撃するだろうけども。
あなた

さっすがダーリン!私のことぜーんぶ分かってるんだネ✩照れちゃうナ!

樋口一葉
樋口一葉
追い出しますよ
あなた

濡れるのは嫌だなぁ

かなり大降りの空を見上げる。
その雨量ときたら、雨の一粒一粒がもはや点じゃなくて線にみえるくらいだ。

わかりやすく言ったら、アイビスのペン5pxくらい。え、わかんない?
そっかぁ…じゃあソーメンくらい。
樋口一葉
樋口一葉
止むと思いますか?
止まないのであれば濡れてでも帰ろう、という意思が見て取れたので「すぐに止むと思うな!」と返す。実際どうだかは知んないけど、女の子をびしょびしょにさせる訳にはいかないだろ!雨も滴るいい女ってか!悪くないな!!
樋口一葉
樋口一葉
全く、ひどい偶然もあるものです
あなた

運命かもしれないよ?

私の顔をちらりと見て、ひぐっちゃんが溜息をつく。いや、うん。それちょっと傷付くぜ?

まぁ、普通に偶然ではあるんだが…。

私は昼休憩でお買い物に。そしたらしばらく歩いた所で雨が降り始めたから、急いで近くの屋根の下に行ったら先客が。そりゃあ喜んじゃうよね!赤い糸繋がっちゃってるー?みたいな!

なのにひぐっちゃんたら駆け込んでくる私をブロックしようとするわ、いざ入れてくれたと思ったら自分が出ていこうとするわ。まったく、恥ずかしがり屋も程々にして欲しいものだ。
樋口一葉
樋口一葉
………相変わらずお元気のようで
その言葉に隣を見る。ひぐっちゃんは雨雲を睨んだままだったが、それがわるい意味じゃないってことは伝わってきた。

嬉しくて、つい照れ隠しをお見舞いしてしまいそうになったけど、我慢我慢。
あなた

元気だけが取り柄だからね!

樋口一葉
樋口一葉
そうですね
あなた

ひ、ひどい!そこは元気なだけじゃなくチャーミングですね(イケボ)って言うとこだよ!?

樋口一葉
樋口一葉
チャーミング…?
あなた

ガチの疑問やめようか

なんだか2人でゆっくり話すのは久しぶりな気がする。
そう思うと、降り始めた時には「雨コノヤロー!」だったけど今は「雨いいぞもっとやれ」だ。いや、うん、あまり長引かれるとひぐっちゃん飛び出しちゃうだろうけど。
あなた

ところで_

泉鏡花
泉鏡花
見つけた
樋口一葉
樋口一葉
…あなたは
可憐な声に、視線を落とす。そこには、右手に傘をさし左手に傘を抱える鏡花ちゃんの姿があった。
泉鏡花
泉鏡花
傘、持っていかなかったから
あなた

わざわざ来てくれたの?さっすが鏡花たん!私のプリンセス!に、魔法のキスを!

泉鏡花
泉鏡花
要らない
即答されて肩を落とす。全く、私の周り、っていうか探偵社とマフィアのガールズたちったら強すぎないかしら。だわよ。
泉鏡花
泉鏡花
帰ろう
あなた

あ、待って鏡花ちゃん。ひぐっちゃんに傘あげてもいいかな?

泉鏡花
泉鏡花
傘は2本しかない
あなた

うん、だからね!私と相合傘しないかい、ベイビー?

泉鏡花
泉鏡花
ごめんなさい。私、危険を感じるとつい手が出てしまうから
あなた

それ間接的に私が危険って言ってる?

樋口一葉
樋口一葉
だいぶ直接的ですよ。
呆れたように言ったひぐっちゃんが、淡々と答える。「情けなどいりません」と。
あなた

そんなこと言っても、ひぐっちゃん仕事中でしょ?

樋口一葉
樋口一葉
それは、そうですが…
あなた

どうせ、私たちがいなくなってから濡れてでも帰ろうとか思ってたんでしょう?

樋口一葉
樋口一葉
それは……
あなた

ね!お礼は逢引デートでいいからさ!

樋口一葉
樋口一葉
謹んでお断りします。濡れて帰りますね
泉鏡花
泉鏡花
逆効果
あなた

冗談だったのに…

みんなして本当に酷いよね!
泣き真似をしてみせたら、二人はまた呆れてように笑ってくれた。嬉しい。
泉鏡花
泉鏡花
…仕方ないから。どうぞ
鏡花ちゃんが差し出した傘をちらりと見て、ひぐっちゃんはまた「結構です」と言った。
あなた

さっきのは冗談だってばよ!?何も請求しないよ!?

樋口一葉
樋口一葉
分かっていますが。…相合傘は嫌そうですし、あなたさんはもう少し雨宿りされていっては?
泉鏡花
泉鏡花
その必要はない。相合傘?でいい。傘は余ってる。
樋口一葉
樋口一葉
身長差があっては傘の役割を果たさないのでは?あなたさんは雨はやむ、と言っていましたし、お先にお帰りください
泉鏡花
泉鏡花
あなたは私と帰る。さっさと傘を受け取って
うん…?なんか、これ、こそばゆいっていうか……論点が傘じゃなくなってるっていうか………自惚れるっていうか…
あなた

そ、それじゃあさ、みんなで喫茶店にいくとかどう?

泉鏡花
泉鏡花
いい
樋口一葉
樋口一葉
結構です
わりと勇気を振り絞ったお誘いはにべもなく却下される。ぴえん。自惚れてごめんなさいね!
泉鏡花
泉鏡花
喫茶店なら後で付き合う。今はさっさと帰りましょう
樋口一葉
樋口一葉
おひとりでお帰りください。あなたさん、どうせしばらくやまないでしょうし、お茶でもできる場所に移動しましょう
あなた

あれ?断られてたのとは違う感じ?

てかひぐっちゃん言ってることめちゃくちゃだし、鏡花ちゃんちょっと怖いですそのおめめ。
あなた

も、もーう!みんな意地悪するくせに私のこと結構好きじゃないですかぁ!嬉しいなぁ!

樋口一葉
樋口一葉
別に
泉鏡花
泉鏡花
そうでもない
あなた

そっかあ…

うーん、負けず嫌いなだけかしら。実は仲良しだよねまだふたり。
どちらにせよ、まぁ、三人で雨宿りっていうのも悪くは…

あ。
あなた

雨、やんだね!?

5pxの雨はポタリポタリのおはじきサイズにかわり、そしてすっかりカラカラに。
空には虹がかかっている。
あなた

みてみてひぐっちゃん!鏡花ちゃん!めっちゃ虹だよ!!

ぽかんと空を見上げるふたり。
これあれだ、「おそらきれい」ってやつでは?違う?
あなた

ねぇねぇ、せっかくだし三人で甘味処いこう!きっと楽しいよ!

ワクワクしてきてそういった私に視線を落とした二人は、やがてどちらともなく顔を見合い、そして溜息をついた。
樋口一葉
樋口一葉
仕事中なので失礼します
泉鏡花
泉鏡花
傘は必要なくなったみたい。帰る
あなた

あれっ?2人とも?

帰っちゃうの?喫茶店は?甘味処は?逢引デートは!?さっきまでのは!?
あなた

ちょ、ちょっと!!?待ってってば!!?弄んだのね!?ひどい!!

泉鏡花
泉鏡花
ただうるさい
樋口一葉
樋口一葉
ひたすらうるさい
あなた

やっぱ仲良しでしょキミたち!!!?

さっきのワクワク返してほしいな!?
そんな私の叫びは、虹の向こうに吸い込まれていった。

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